ウクライナ軍、クルスク侵攻にチャレンジャー2戦車も投入 HIMARSなどに損害も
損害の拡大を防ぐためにも深入りは避けるべきとの見方
公平を期して言えば、クルスク州方面では双方に大きな損害が出ている。ウクライナ側はロシアの軍人数百人を捕虜にしたほか、防空兵器でロシア側のヘリコプター数機やSu-34戦闘爆撃機1機を撃墜した。ウクライナ軍はこの作戦で、FPVドローンを初めて本格的な空対空任務にも使用している。 ロシア側はクルスク州と接するウクライナ北部スーミ州で、侵攻部隊の防御にあたっていたウクライナ軍の希少なポーランド製S-125地対空ミサイルシステムを撃破した。また、ウクライナ軍の希少な米国製高機動ロケット砲システム(HIMARS)1基も今週、クルスク方面とみられる場所で被弾している。 最も貴重な西側製兵器を危険にさらすのをいとわない姿勢は、この作戦にかけるウクライナ軍参謀本部の決意を示している。ウクライナ軍の将軍たちはクルスク州内のかなりの部分を制圧・保持する考えなのだろう。 では、ウクライナはなぜそうしようとしているのか。フィンランドのアナリスト、ヨニ・アスコラは「ウクライナの高官の発言や最近の進軍を見ると、ウクライナは、将来の交渉で有利な材料にもなり得る緩衝地帯の設置をめざしているようにますます思える」と述べている。 とはいえ、この緩衝地帯をどこまで広げられるかには厳しい制約がある。当然、ロシア側が関与する。ロシア軍がクルスク州で大規模な反転攻勢を組織し、ウクライナ軍の進撃を抑え込む可能性は依然としてある。 また、ウクライナ軍の兵站も制約要因のひとつだ。第82空中強襲旅団をはじめとするウクライナ軍部隊がクルスク州に深く侵入するほど、糧食や燃料、弾薬などの補給を続けるのは難しくなる。 第82空中強襲旅団はクルスク州で30km強前進した可能性がある。補給線を引き伸ばしすぎたり、格段に大きな損害を出したりせずに進めるのはこれくらいが限界かもしれない。アスコラは「ウクライナは過剰な拡張は避けるべきだ」と戒めている。
David Axe