山口県周南市鹿野総合支所の新庁舎は災害対策強化…炊き出しできる「かまどベンチ」、テントになる「東屋」
山口県周南市鹿野総合支所の老朽化に伴い建設が進められていた新庁舎が完成し、供用が始まった。県産木材をふんだんに使い、非常時に炊き出しができる「かまどベンチ」を敷地内に設けるなど災害対策の機能も強化した。(河村輝樹) 【写真】新庁舎敷地内に設置された「かまどベンチ」
新庁舎は、旧鹿野町役場だった旧庁舎(1971年築)から約600メートル離れた県道沿いに建てられた。鉄筋コンクリート一部鉄骨平屋683平方メートルで、段差のない造りになっている。事業費は約6億6300万円。
同支所は市役所本庁舎の北約20キロの鹿野地区中心部に位置し、災害時には周辺の公共施設と同じく避難所になる。旧庁舎は行政機能優先の構造で避難者を受け入れる設備などが不十分だったため、市は新庁舎について災害時の受け入れ機能の充実にも力を入れた。
新庁舎横の休憩スペースのベンチはかまど機能を備える。座面を取り外してまきを使って火をおこすと、炊き出しや調理に利用できる。そばには「防災東屋」を設置。幕を張ると風雨をしのげるテント(高さ2・4メートル、床スペース9平方メートル)になる。一時的な救護所とすることなどを想定している。
庁舎裏には、便器や囲いを取り付けて使用する「マンホールトイレ」を配備。駐車場に併設した鉄骨平屋の防災倉庫(198平方メートル)には非常食や飲料水、段ボールベッドなどを備蓄している。庁舎内は各所から太陽光を取り入れ、窓口カウンターは県産のヒノキやスギを使った内装でぬくもりを演出し、そばにキッズルームや相談室を配置。山口銀行鹿野支店も旧庁舎から移転、営業している。
新庁舎は昨年7月に着工し、今年11月中旬に完成。供用は今月23日に始まり、24日に完成記念式典が行われた。藤井律子市長はあいさつで「市民サービスの向上と魅力ある地域づくりに努めたい」と述べた。出席した鹿野地区自治会連合会の山本茂会長(74)は「段差がなく、高齢者にも優しい造り。地域を活気づける拠点としても期待したい」と話していた。
旧庁舎については、市は来年度以降に解体し、2027年度の開業を目指して観光交流拠点施設を建設する。