【DeNA】野球をやめようとした4年目サブマリンがプロ1勝「拾っていただいた恩返し」
◆JERA セ・リーグ 中日1―2DeNA(30日・バンテリンドーム) やっとの思いでつかんだ。オリックスから移籍したDeNAのサブマリン・中川颯(はやて)投手(25)は2つの記念球を大事そうに握りしめた。「つらくて苦しい経験が多かったけど、まずは1勝できて良かった」。プロ4年目で待望の初勝利&初安打をマーク。地元・横浜から駆けつけた両親に、孝行息子が最高のプレゼントを贈った。 冷静に腕を振った。1―0の6回1死二、三塁のピンチ。代打で出場した大島を投ゴロ、カリステを遊ゴロに仕留めた。「気持ちよりも大島さんがどういう対応をしてくるのか観察した。冷静に投げられた」。7回無死一、二塁では右前腕の張りを訴え緊急降板したが「大丈夫。大事ではない」。自己最長の6回0/3を4安打1失点。2回には投前への内野安打でプロ初安打も記録した。リクエストでアウトの判定が覆ると、桐光学園時代はエースで4番を任されていた右腕は「今後につながる」と表情を崩した。 小学時代からサブマリンだった。当時、150センチと小柄だった颯少年。オーバースローだったが「普通に投げても中学で活躍できない」と父と相談し、元ロッテのサブマリン・渡辺俊介氏をヒントにフォーム改造に着手。著書を読み込み、徐々に腕の位置を下げていった。中学3年間で身長は30センチも伸び、それと反比例してリリースの位置は低く、低くなっていった。 オリックス時代は肩のけがもあり、分厚い投手陣に入り込めず育成契約も経験。わずか1登板にとどまり、ここ2年間は1軍登板もなかった。昨オフに戦力外となり、一度は野球をやめようとも考えた。「去年の自分からしたら今の状況は考えられなかった。拾っていただいた恩を少しずつこういう形で返していきたい」。汗と涙がにじんだ大事な1勝。ここからがスタートだ。(内藤 菜月) ◆中川 颯(なかがわ・はやて)1998年10月10日、横浜市生まれ。25歳。小学1年で野球を始め、中学では横浜泉シニアでプレー。桐光学園では1年夏からベンチ入り。甲子園出場はなし。立大進学後は1年春からリーグ戦に出場し、1年春に出場した全日本大学選手権では最優秀投手を受賞。20年ドラフト4位でオリックス入団。23年オフに戦力外通告を受け、DeNA入りした。184センチ、80キロ。右投左打。今季年俸は650万円(推定)。
報知新聞社