認知症発症遅らせる可能性あり 毎週の頭使いながら体動かす運動 国内で唯一、介入効果が出現 神戸大と市の共同研究で/兵庫・丹波市
頭を使いながら体を動かす運動を定期的、継続的に行うことで、認知機能が向上し、認知症の発症を遅らせる可能性があることが、兵庫県丹波市と神戸大学が取り組んだ共同研究の結果から分かった。研究責任者の神戸大学大学院保健学研究科教授で、認知症予防推進センター長の古和久朋さんが、丹波市内で研究に協力した市民ら約200人に報告した。成果を踏まえ、新年度から次の研究に入る。市内で広く行われている「いきいき100歳体操」に、頭を使いながら体を動かすミニ認知機能プログラムを追加。2026年3月末まで研究を続け、認知機能の維持・向上効果があったかどうかを調べる。全国4カ所で同時期に同様の研究が行われ、同市会場のみ介入効果が現れた。 認知症を遠ざけるには血管を柔らかく保つことが大事で、教室(週1回、90分)は血管の健康を保つためのもの。生活習慣病が血管に悪影響を及ぼすため、頭を使いながら体を動かす運動の他に、ストレッチ、エアロビクス、筋力トレーニングなどの運動や、栄養指導もあった。
研究参加者は65歳以上の203人=図。20年10月から今年2月までの36カ月を、18カ月ずつ前半グループ「介入群」(教室参加者、103人)、後半グループ「対照群」(待機者、100人)に分けて実施。待機者が教室に参加していない、開始から18カ月時点の結果を評価し、介入効果を調べた。 前半グループ、後半グループとも6カ月に1度、▽身体機能検査(握力、筋肉量、歩く、立ち上がる能力、肺機能など)▽頭の働きについて7種類の認知機能検査(記憶力、注意力、効率的に計画・実行する力など)▽血液検査―の健康チェックがあり、データを蓄積。研究開始時と、18カ月時は、タブレットなどで認知機能評価をするトランプゲーム「のうKNOW」に取り組んだ。 単語の記憶、論理的記憶、注意力などを点数化。開始時点を100点としたとき、18カ月後の比較は、教室参加者が154点、待機者は139点と15点差がついた。 参加者は足の筋力が増強し、呼吸筋力の向上も認められ、頭と体の働きが良くなることが明らかになった。「呼吸筋力の増強により、強い咳ができ、誤嚥性肺炎など呼吸器疾患の予防につながる可能性がある」とした。 18カ月後の「のうKNOW」の検査でも、教室参加者の方が集中力、注意力、反応速度のスコアが高かった。