廃炉進まぬ福島浜通りで、移住者が増えている理由:被災12市町村は“挑戦を始めるのに最適な場所”
注目企業が工場建設、スタートアップに心強い施設も
福島イノベーション・コースト構想推進機構が2月28日、東京・品川で開催したメディア発表会では、「大熊ダイヤモンドデバイス」の星川尚久代表が「廃炉にチャンスをもらった」と述べ、福島第1原発のある大熊町に製造工場を整備すると説明した。 同社のダイヤモンド半導体は高温に強く、冷却性能にも優れ、放射線にも強い。過熱を防ぐための遮熱板やファンが不要なので、デバイスの小型化が可能だが、オーバースペックで高コストなため従来市場では競争力がなかった。しかし、廃炉現場では熱や放射線に強く、小型化可能であることは大きなメリットになる。放射線に強いことは、RTFで実証実験をしている宇宙開発企業とも相性がいい。さらに今後は、負荷の高い電気自動車の高速充電装置や5G以降の通信基地局など幅広く使われる可能性もあり、量産化が進めば大熊町に大きな雇用も生むかもしれない。 大熊町には他に、旧大野小学校をリノベーションした「大熊インキュベーションセンター(OIC)」があり、まだ成長過程の企業や起業家が集まっている。他業種の人と触れ合い、連携するだけでなく、町民も出入りする交流スペースもあるので、新たな町作りの拠点となりそうだ。 「ロボット」「宇宙開発」「イノベーション」といった言葉から、新しいアイデアや最先端の技術を持つ若手や働き盛り世代が歓迎される気もするが、秋元さんは「リタイア後に食堂をしようと考えている人や、都会を離れて農業をしたい人も大歓迎」と言う。町には、仕事帰りに食事や酒を楽しんだり、母親たちが買い物をしたりする場所なども必要なのだ。 「一つ一つは小さな挑戦だとしても、それぞれの経験や得意分野を持ち寄ることで、その点と点が結ばれて線となり、面となって地域が盛り上がっていくのだと思う。新しい町づくりに参加してみたい方は、ぜひ移住セミナーやツアーに参加してみてほしい」(秋元さん) 撮影=土師野 幸徳(ニッポンドットコム編集部)
【Profile】
土師野 幸徳(ニッポンドットコム) 出版社勤務を経て、現在はニッポンドットコム編集部チーフエディター。主な担当は「旅と暮らし」。「レゲエ界に革命を起こしたリズム“スレンテン”は日本人女性が生み出した:カシオ開発者・奥田広子さん」で、International Music Journalism Award 2022(ドイツ・ハンブルグ開催)の英語記事部門において最優秀賞を獲得。