収穫が進む早期米。農家に支払われる概算金は引き上がっているが、生産費も高騰している＝７月下旬、南さつま市加世田

　日本人の主食の米が高騰している。アフターコロナの外食産業や訪日客の回復で需要が高まり、全国的に品薄感が強まっている。昨年の東北の不作も重なり、鹿児島県内の卸売業者も調達に苦慮し、店頭で販売される米は値上げが相次ぐ。国は在庫が逼迫（ひっぱく）している状況ではないと説明するものの、価格動向については２０２４年産米の流通が本格化するまで不透明だ。 　米の卸売りをする原田米店（薩摩川内市）の原田匠社長（４６）は「仕入れる度に価格が上がり、卸すごとに値上げせざるを得ない状況」と説明する。品不足で新規の注文に対応するのは難しく、既存の顧客分をなんとかかき集めているのが現状だ。 　県内の別の卸売業者は７月から米国産カルローズ米をブレンドした商品の販売を始めた。担当者は「国産が高騰し、商品価格を抑えるために初めて外国産米を使った」と明かす。 　コロナ下で在庫がだぶついていたのが、最近は訪日客の回復を含め外食需要などが増加。現在、主に流通している２３年産米は高温障害の影響で東北産の収量が減ったこともあり、品薄感が強まっている。

　農林水産省のまとめでは、出荷・販売段階の全国民間在庫は、６月末時点で前年同月より３８万トン少ない１１５万トン（速報値）で、同月としては十数年ぶりの低水準だ。ＪＡなどの出荷業者が卸売業者に売り渡す際の相対取引価格は、６月の全銘柄平均で６０キロ当たり１万５８６５円となり、過去１０年で最高値となった。 　県内の小売店でも値上げが相次ぐ。県内全域で展開するスーパーは、２２日から価格を１割程度引き上げた。仕入れ担当者によると６月に続き２回目で、５キロ袋で前回を上回る４００～５００円程度の上げ幅。大型量販店の担当者も「昨年と比べれば５キロ入りで千円以上高い。物がなく売り場も散々な状況」と話す。 　収穫期を迎えた早期米も引き合いが強く、県内各ＪＡが生産者へ仮払いする概算金は、１等米で６０キロ当たり１万９０００円程度と２３年産より約４割高くなった。生産者にとっては朗報のように映るが、南さつま市の米農家、若松正伸さん（７７）は「植え付け後の天候が悪く収量は２割ほど減りそう。生産費も高騰していて売り上げはあまり変わらない」とこぼす。

　直近の統計では、２２年産で６０キロ当たり生産費が１万５２７３円だった。ＪＡ県経済連農産事業部の新村浩二部長は「これまでの価格では多くの農家は赤字。主食用米の作付けは年々減少しており、コストを価格転嫁できないと安定生産は難しい」と危惧した。