「ラウンドアバウト」交差点は普及する? 9月に改正道交法施行
東日本大震災から4度目のお盆を迎えました。この震災では、交通ルールを守ることが逆に命を落とすことになるというケースがありました。高台に逃げる際に反対車線に乗り入れずに片側一車線の道路で渋滞を作り逃げ遅れる。また、赤信号や一時停止を守ったり、倒壊した信号機や停電により信号灯がつかなくなった信号機などによって渋滞ができ、そのまま津波に巻き込まれてしまったという事例です。 もし交差点が信号による制御ではなかったら、もしかしたら通行がもっとスムーズだったかもしれません。そんな信号によらない交差点として「ラウンドアバウト」があります。9月1日に施行される改正道交法により、ラウンドアバウトは初めて交差点として位置づけられることになったのです。
停電リスクや多額の維持・整備費
ラウンドアバウト(環状交差点)とは、クルマを交差点の中央に設けた円形地帯(中央島)に沿った環道を周回させ、分岐する道路へ車を誘導するため信号を必要としない交差点制御方式です。 ヨーロッパを中心に普及していて、フランス・パリの凱旋門の周囲を走るラウンドアバウトが有名です。『還道交通流に優先権があり、かつ環道交通流は信号機や一時停止などにより中断されない、円形の平面交差部の一方通行制御方式』と定義されています。ですので、駐車機能を備えている駅前ロータリーは円形状の平面交差点であっても、ラウンドアバウトとはいいません。 ラウンドアバウトは災害直後だけでなく、被災地の復興にも効果的といえます。被災3県では約700基(約8%)の信号機が損壊しました。また被災後の停電により滅灯となった信号機も多数あり、交差点には全国から動員された警察官が交通整理を行わざるを得ない状況となりました。 また、交差点での事故は交通事故の中でももっとも多く、警察庁のまとめによると、死亡事故では市街地の交差点が約3分の1(構成率32.0%)を占めており、交通事故全体でも4割以上(同41.9%)となっています。 さらに全国には20万4713台の信号機が設置されています(2012年度末現在)。これらの維持のためのコスト、電力使用量も莫大です。たとえば北海道の2014年度の交通安全施設整備費(交通規制標識、道路標示、交通信号機及び交通管制センター施設の整備費)は39億1494万4000円です。 東京都の予算は合計273億9874万6000円となります。その内訳は信号や標識の整備・新規などに使われる交通安全施設整備費と補修・管理など運用に使われる交通安全施設管理費にわかれます。 「交通安全施設整備費として152億5503万7000円。交通安全施設管理費として121億4370万9000円が今年度の予算として計上されています」(東京都財務局) 交通制御に関しては、多くの予算が割かれているのです。ラウンドアバウトが普及すれば、初期費用はかかるものの、これらの問題もある程度は解消するかもしれません。