河合優実らキャスト陣が素晴らしい ラストまで見たい秀作『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』
■家族全員が愛おしい ゲスト俳優まで惹きつけられるキャストの素晴らしさ
第2話では、手術の同意書にサインしたことで、母に死ぬより辛い「生きていくこと」を与えてしまった七実の苦しさとともに、母・ひとみの苦しみを体感した。なによりも子どもたちの幸せを願い、七実と草太を育てることが生き甲斐だったひとみ。なのに自分自身が、子どもの荷物になるだろう現実。自分がもう終わったことがわかる。「もう死にたい」と。母と娘の苦しみが癒えぬ中、車いすで初めて外出した日の映像が、素晴らしく美しく、沁(し)みた。 娘はいつの間にか庇護(ひご)すべき対象から、たくましい大人に成長しつつあった。ひとみは気づく、終わってはいない、「この(成長していく子どもの)笑顔を見るための人生をいただいたんだ」と。 第3話では「昔もええ、今もええ。一生懸命食べて、一生懸命生きてれば、それでええ」との祖母・芳子の言葉が響く(この芳子の物語はこれから先、描かれていく)。大九監督が積み上げていく“ほぼ”トゥルーストーリーは、「どこぞの映画監督が世界を泣かす」特別な家族の特別な物語ではなく、1話1話、きちんと見る人の心に触れる。 ここには書けなかったが、キャスト陣の素晴らしさは言うまでもない。飄々(ひょうひょう)としたベースに、ときにパッと火のつく七実を非常に魅力的に見せる河合を筆頭に、家族全員が好演との言葉以上の愛おしさで惹(ひ)きつける。さらに福地や、七実を囲むキャラクターを演じる配送業者の奥野瑛太、アルバイトの先輩で心の師匠的な岡野陽一、七実の担任の松田大輔などみんなイイ。第3話での旅行代理店社員役の川崎珠莉(崎は正式には「たつさき」)ら、ゲスト出演のキャストも光っている。 余談だけれど、母がぺこぺこと謝りまくるコンビニ赤べこ事件は、原作にも登場するエピソードだ。本編で優しいコンビニ店長を演じているのは、朝ドラ『虎に翼』で“発芽玄米”こと小橋役ですっかり人気者になった名村辰である。 今後も七実の周囲にはさまざまなキャラクターが登場。時代設定、2014年から2025年(!)までの世界を、それぞれに魅力的なキャストが演じて、映像作品ならではの世界を作り上げていく。 『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』とは、あらためて非常に長いタイトルだが、咀嚼(そしゃく)してみるに、こう言い切れるのは、スゴイことなんじゃないだろうか。さらに彼らを見続けていくと、愛すれど縛ってしまう結びつきではない家族の形が浮かび上がってくる。ひとりひとりの耕助との関係から見えてくる生き方も感じながら、最後まで彼らの横にいたい。(文:望月ふみ)