発達障害と知的障害――分けられた「線引き」と社会的サポートの現状
「知的障害」の位置づけ
今回は発達障害との関連や福祉サービスなどを中心にお話しします。『知的障害を抱えた子どもたち』では少し切り口を変えてよりくわしく説明しています。 【数学間違い探し】大学生でも間違える計算「40-16÷4÷2」の答えは? まず知的障害としばしば混同される「発達障害」との関連についても触れておきます。アメリカ精神医学会の『DSM-5-TR精神疾患の診断・統計マニュアル』では、知的障害は発達障害と並んで神経発達障害としてまとめられています。 この中には知的障害、コミュニケーション障害(吃音を含む)、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥(欠如)・多動性障害、特異的(限局性)学習障害、運動障害(発達性協調運動障害を含む)、チック障害、その他が含まれています。2018年に公表された世界保健機構(WHO)のICD11でも、若干の差異はありますが、基本的に同じです。 わが国の発達障害の定義は発達障害者支援法において「第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」とされており、「知的障害」は入っていません。 障害基本法での障害とは身体障害、知的障害、障害の3障害であり、発達障害は新しい概念でもあり、障害者総合支援法の中では精神障害に位置づけられています。このために後述の障害者手帳の取得にあたっても、知的障害は「療育手帳」、発達障害は「精神保健福祉手帳」と異なります。 国際的な分類に合わせるためには、将来的に知的障害福祉法、障害基本法、障害者総合支援法、発達障害者支援法などを改正して、神経発達障害という大きなくくりでまとめることが望まれます。 ただ発達障害学会は1966年に精神薄弱研究協会として発足し、1979年に精神薄弱の呼称が知的障害に変更されるときに発達障害学会となりましたので、知的障害、発達障害両方を対象としています。