NTTデータ、データセンターにおける液体冷却技術の検証施設「Data Center Trial Field」を開設
株式会社NTTデータは21日、データセンターにおける液体冷却技術の活用推進に向けて、検証施設「Data Center Trial Field」を11月に千葉県野田市に開設すると発表した。 【画像】液体冷却技術活用の課題と施設利用のメリット NTTデータでは、AIやクラウドサービスの発展により、データセンターの需要は急増しており、膨大なデータ処理を効率的に行う技術はデータセンターの電力消費の急増や、サーバーラックの高集積化による発熱量の増加を引き起こし、従来の空気による冷却方式のみでは対応が難しくなっていると説明。そのため、冷却効率が高く、省エネルギーな水冷サーバーや液浸冷却など液体冷却技術のニーズが高まっているとしている。 しかし、現在の液体冷却技術はメーカーごとに異なる仕様で設計・提供されているため、負荷容量や台数に関する初期構成、稼働後のサーバー増減などの構成変更の柔軟性に欠け、顧客要望を十分に満たせないなどの課題がある。また、サーバー室の構築には、サーバーやサーバーラックのほか、熱源機器と熱交換器をつなぐ配管・配管接続部の処置といった安全を担保するための施工や、中央監視ネットワークと各機器の保守運用のためのシステム連携・運用フローを確立する必要があり、データセンター事業者を中心に、配管施工会社・装置メーカー・設計会社等の相互理解・連携が求められる。 こうした液体冷却技術の活用における課題を解決し、社会実装をより加速させるためには、データセンター環境を再現できる検証施設と、データセンターに関わる各事業者が連携・協働するコミュニケーションの場が必要だとして、NTTデータでは検証施設を開設する。 Data Center Trial Fieldは、日比谷総合設備株式会社および桑名金属工業株式会社の協力のもと、データセンターの冷却設備を再現し、複数の液体冷却の装置・サーバーを同時稼働できる環境を提供する。開設にあたり、NTTデータは液浸冷却装置・水冷ラックおよびサーバーを提供、日比谷総合設備は検証施設の構築、桑名金属工業はチルドタワーを提供する。 施設では、データセンターを再現した環境下で液体冷却技術の実機稼働が可能になるほか、データセンターの効率性向上のための最適な冷水温度・流量を探る検証や、既存データセンターへの導入に向けた監視システム・施工・運用面の適応可否確認、実機導入のための保守作業員のトレーニングが行える。 施設は、独自に発展する液体冷却技術を活用するために、データセンター事業者や機器メーカーの他、ITベンダーや研究機関などデータセンター領域のさまざまなプレーヤーが集い、課題解決に向けた共同検証を行う場として運用を行う。 Data Center Trial Fieldでは、ドライクーラーとチラーを一体化した熱源「チルドタワー」による柔軟な運用条件の設定が可能。チルドタワーは外気を活用することで省エネルギー性能が高いほか、供給冷水温度域が広いことを特長とする。そのため、冷水の要求温度が異なる装置の柔軟な受け入れと、適用環境に応じた温度条件を想定した検証が行える。 また、二次側接続口を複数用意しているため、機器の同時稼働により、同一環境下での異なる機器の検証や、差分評価が可能。さまざまな検証テーマを並行して実施できるほか、冷却システムを止めることなく機器の入れ替えを行う運用および施工テスト・評価が行える。 施設は、データセンターの機械設備施工を多く手掛ける日比谷総合設備の拠点を活用している。そのため、液体冷却の配管と建物配管の接続技術検証および製品開発といった、冷却技術周辺に関する検証についても、コラボレーションによる実施が可能となる。 NTTデータは今後、Data Center Trial Fieldにおいて、液浸冷却や水冷サーバーなど液体冷却の性能や、運用・周辺技術・ソリューションに関連した検証を行い、顧客要望を柔軟に満たすサービス提供を行うと説明。また、装置配管に関する国内外の規格差異に起因する施工課題を解消し、さまざまな環境で液体冷却技術が導入されることを想定して、日比谷総合設備と専用部品の開発などに取り組んでいくとしている。 NTTデータは、ITベンダーとデータセンター事業者をつなぎ、業界を横断した事業者間コミュニティの拡大やコラボレーションを通して、液体冷却技術の活用と社会実装を推進し、持続可能な社会の実現に向けて貢献していくとしている。
クラウド Watch,三柳 英樹