「高円寺のキャバ嬢」がオタ客の同伴でプロレス観戦に行って「スター女子プロレスラー」に!? ジュリア初の自伝(レビュー)
当時バイトしていた高円寺の場末のキャバクラで、プロレスオタクの常連客から「ブロレス興行に付き合ってくれたら同伴してあげるよ」と誘われたジュリア。そんな彼女が「最初に見たプロレスは、狭い部屋の中で水着みたいなのを着た女の子が体操で使うマットの上ででんぐり返しをしながら叫び声をあげていて、それを中年男性が取り囲んでニヤニヤしながら見ているという、得体の知れないシロモノだった」。 【写真】腹筋が眩しい…ジュリアが世界最大のプロレス団体WWEのNXT初戦に勝利した姿を見る 「なんでこんなモノ観てるの? 恥ずかしいから、もうやめなよ!」「わかったよ、今度はちゃんとしたほうを見せるから。そんな怒んないでよ……」 それからわずか半年で、彼女はキャバクラのカラオケで鈴木みのるの入場テーマ『風になれ』や獣神サンダー・ライガーの『怒りの獣神』を熱唱し、プロレスオタクの常連客から「君は、プロレスに向いてると思う」と言われるまでになる。実際にプロレスラーへと転身すると生活保護の申請を本気で考えるぐらい金銭的にもブラックな世界だったけど、彼女にはプロレスの適性があった。 「プロレスは八百長だとか、最初から勝敗が決まっているとか、台本があるとか……。そんな噂はプロレスにハマる前から聞こえていたけれど、そういう話とは別次元のところで、あの人たちは闘っていた」 「プロレスのマイクパフォーマンスは全部台本が決まってるんでしょ、とか言ってくる人がよくいるけど、冗談じゃない。マイクはみんな基本、全部出たとこ勝負だ」 正直な記述も好感が持てるし、イタリアと日本のハーフゆえの迫害に始まり、女子プロレスへの偏見やプロレスを基本ナメてる(=強さを求めず可愛ければいいと思っている)不誠実な団体関係者やファンとも闘い続けた結果、世界最高峰のプロレス団体・WWEに辿り着くという非常に夢のある話なのであった。キャバクラの同伴客、見る目ありすぎ! [レビュアー]吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター) 1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!! 道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(? )新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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