夫の介護を「週1日」子供に代わってもらって起きた変化とは…400万人以上<老老介護>する時代に「我慢と忍耐」はとっくに限界
「地域包括支援センター」は、市町村が設置している機関で、地域の高齢者の相談や介護の予防支援などを行っています。厚生労働省の発表によると、2022年時点で全国5,404ヵ所(支所を除く)に設置されているそう。そのようななか「介護を助けてくれるものが、あなたの周りに実はたくさんあります」と語るのは、看護師、看護・介護ジャーナリストの坪田康佑さん。さらに坪田さんは、「1本の電話やちょっとしたお願いをできるかできないかで、介護のしんどさは、大きく変わっていく」とも言っていて――。 【書影】「老老介護」に少しでも不安を覚えたり、 悩みを抱えたりしているすべての人たち必読!坪田康佑『老老介護で知っておきたいことのすべて 幸せな介護の入門書』 * * * * * * * ◆「思い込みのプレッシャー」 「たった1本の電話で、あなたの介護は変わります」 「介護でつらくなったときにまずやるべきことは『つらいです』『助けてほしい』と声を上げることです」 「まず考えることは、介護する側であるあなたがいかにラクに過ごせるかです」 これらは「介護で大切なことはなんですか?」と聞かれたときに、私が必ず伝えている言葉です。 「介護のつらさ、大変さが、本当にわかっていますか? そんなことでは変わらないですよ」 「介護は他人に頼るのではなく、家族がやるものでしょ?」 そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、1本の電話やちょっとしたお願いをできるかできないかで、介護のしんどさは、大きく変わっていきます。 すべての介護を1人で行ってきた方が、介護の相談窓口となる「地域包括支援センター」に電話し「介護保険サービス」を活用したことで、心に余裕ができて笑顔が増えた―そういう話を、いくつも聞きました。 こんな方もいました。 「子どもにはなるべく迷惑をかけたくない」とおっしゃって旦那さんの介護を1人で頑張っていた奥さん。しかし、やがて限界を迎え、本人からしたら恥をしのんで(まったく恥なことではないのですが)「つらい」と助けを求め、週末1日だけ、お子さんに介護を代わってもらうことにしたそうです。 その1日を友人との食事や買い物、大好きな映画鑑賞など、自分のリフレッシュの時間にあてることにしたのです。 はじめは、休むことに罪悪感を覚えたり、旦那さんからは「自分だけ楽しんでいいなぁ」と嫌味を言われたりもしたそうです。 ですが、休みを挟むことで、日々の介護をおおらかな気持ちでできるようになり、旦那さんの小言もやさしく受け流せるようになり、関係性もよくなったそうです。 周囲に助けを求めるための1本の電話や相談といった「ちょっとした行動」には、高いハードルがあるのもよくわかります。 「家族の面倒は私が見なきゃ」という目に見えない使命感、「家族なのだから面倒を見るのは当たり前」と思われているのではないかという「思い込みのプレッシャー」によって、ついつい1人で介護を背負いこんでしまっている。 そういう方は、非常に多いように見受けられます。 なぜでしょう。 それは、これまでの長い介護の歴史からくる、ある種のしがらみのようなもののせいなのかもしれません。
【関連記事】
- 柴田理恵 病で母が要介護4に。仕事を辞めて東京に引き取るか、それとも片道3時間の遠距離介護か…迷ったとき思い出した母の力強い言葉とは
- にしおかすみこ 80歳の母が認知症で実家がゴミ屋敷に。掃除をしたら「死んでやる!」と叫ばれて。ダウン症の48歳姉、酔っ払いの父と送る家族4人生活とは?【2023年BEST】
- 樋口恵子 嫁姑問題を避け、自立しようと健気に生きてきたのに思いがけない成行きが。近ごろの親は老いの生き方・住まい方まで難しい【2023年BEST】
- 柴田理恵 要介護4だった母が頑張って要介護1まで回復!精力的にリハビリに取り組むよう、母の鼻の先にぶら下げた<2本のニンジン>とは
- 柴田理恵 要介護の母と会うと1カ月介護サービスを受けられず、施設にも入れず…<孤独>と向き合ったコロナ禍の遠距離介護で気づかされたこと