画家と写真家による二人展。それぞれの視線で写しとったものとは?
小誌でも活躍する写真家・小川真輝と画家の石田淳一による2人展が、東京・日本橋の〈一番星画廊〉で開催中だ。小川は今回が初の作品発表の場となった。 日々、風景やものをまなざし、写し取る。写真家はカメラ、画家は絵筆、と使う道具は違うし、きっと描写のプロセスも異なる。しかし、2人の表現はぶつかり合うのではなく、緩やかに交錯していた。 小川真輝は小誌Casa BRUTUSや他の媒体でも大活躍している写真家だ。光の使い方に長けており、様々なアイデアで被写体を輝かせ、現場では絶大な信頼を得ている写真家の一人だ。石田淳一は、主に静物を写実技法で描き続けている画家だ。使用する画材は油絵の具、ペン、鉛筆等作品によって様々だが、「眼の前にモチーフを置いて描く」そのシンプルな行為にこだわり制作を続けている。 2人が出会ったのは、2020年。石田の個展『ある日-trace of life-』が同ギャラリーで開催された時のこと。展示撮影をした小川が石田の作品を見て、対話が始まった。構図や光、表現すること。絵画と写真について、と2人の話は尽きることなく深まっていった。その様子を見て、この展示の企画が立ち上がったとギャラリーオーナーはいう。
作品制作をする過程では、数ヶ月おきに制作中の作品を見せ合い、互いに課題を出した。石田の静物《物が置かれている風景》に登場する布は小川から石田へ、《視点07》に登場する骸骨は石田からのリクエストである。小川の作品の中には、石田が用いるモチーフや構図を想起させるものがときおり登場するように思えた。石田はどうだったのだろうかと尋ねてみたら、以下のコメントが返ってきた。 「小川さんからの刺激を受けた事は勿論です。小川さんの写真はモノを使いながらモノから切り離した(正確にはモノから地続きで発生した)見え方があります。自分もモノや絵の具、写実性を使いながら眼目(がんもく)には映らない性質を表現する事を目論んでいます。その重なるポイントが写真からのアプローチをされている小川さんの写真を拝見していて再認識と発見があります」(石田淳一) 眼の前にあるモチーフを写実的に切り取る写真家と画家の2人。一点一点、表現された作品の美しさも見ものだが、それぞれの視線が見えたり、時に交錯したりする。その瞬間が面白い。ぜひ会場に足を運びたい。4月13日まで。
在るということ、それぞれの視線
〈一番星画廊〉東京都中央区日本橋3-6-9箔屋町ビル1F。12時~17時。~2024年4月13日まで。日月休。入場無料。TEL03 3272 2525。
photo_Miyu Kawabe text_Keiko Kamijo