吉岡里帆と荻上直子が語る人生の転機「私にとってのチェンジは『カルテット』」(吉岡)「留学後に撮った1本の自主映画」(荻上)
――そうなんですね。スパークの結果かもしれませんが、最終回の「人生、チョロかった!」の最高のインパクトから、手のひら返しのように有朱が人気になりました。そこから吉岡さん自身の人気もどんどん加速して。 吉岡「好きでいてくれる人もいるんだと。どんな人も必死で生きているし、そのエネルギーに真実味があれば共鳴してくれる人もいる。何より作品が面白くなる。私は体も声も顔も、全て委ねるだけ。そうした感覚が大きくなりました。今でも人の目が全く気にならないということはないですけど、当時の気になり方とは種類が変わったように思います」
荻上監督のチェンジは米留学から帰国後に撮った自主映画
――監督のチェンジは。 荻上監督(以下、荻上)「私は28歳くらいのときにアメリカに留学して、帰ってきてから自主映画を1本撮ったんです」 ――PFF(ぴあフィルムフェスティバル)※の応募の前ですか? ※1977年より続く映画祭ぴあフィルムフェスティバルの自主映画のためのコンペティション「PFFアワード」は、森田芳光、黒沢清、李相日、石井裕也など、日本映画界を担う監督を多く輩出。荻上監督も同アワード入賞が劇場映画デビューのきっかけになった。 荻上「応募した作品(『星ノくん・夢ノくん』)でした。そのときに、もしこの先、商業映画が作れなかったとしても、一生映画を撮り続けようと決心したんです。自主映画でもいいから、撮り続けようと。その、“作り続けたい気持ち”は今も変わってないのですが、そう決心した瞬間がチェンジかなと」 ――映画を作り続けようと決めた瞬間。 荻上「映画には、一度ハマると抜けられない、底なし沼のような魅力があります。とにかく面白くって。自分の考えた脚本がスタートなんですけど、役者さんが演じると自分の想像を超えてくる。他にもいろんな才能の人が集まって、映画ってひとりじゃ作れないんですよね。そのことを感じられて、すごく面白くて。一生続けようと」 ――新作映画『まる』のセリフにも登場したように、「ジタバタ」しながら、ですか。 荻上「ですね。ジタバタしてます」 吉岡「ジタバタ、終わらないですよね。私もです」 荻上「もうね、ジタバタ勝負ですよ。一生終わらないジタバタ勝負を続けていきます」 監督や吉岡さんが“ジタバタ”すればするほど、ステキな作品と出会うことができる。 荻上直子(おぎがみ・なおこ) 1972年2月15日生まれ、千葉県出身。94年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画制作を学ぶ。2000年に帰国。04年に『バーバー吉野』で劇場映画監督デビューし、第54回ベルリン国際映画祭・児童映画部門特別賞を受賞した。06年の『かもめ食堂』が大ヒット。その他の主な監督作に映画『めがね』『僕らが本気で編むときは、』『波紋』など。最新作は堂本剛を主演に迎えた『まる』。 吉岡里帆(よしおか・りほ) 1993年1月15日生まれ、京都府出身。2016年、NHK連続テレビ小説『あさが来た』の第108話から登場。丸メガネの「のぶちゃん」として一躍注目を集め、翌年放送の『カルテット』(TBS)で一気に知名度と評価を得るとともに、人気を獲得していった。近年の主な出演作に、ドラマ『時効警察はじめました』『しずかちゃんとパパ』『時をかけるな、恋人たち』、映画『ハケンアニメ!』『アイスクリームフィーバー』『ゆとりですがなにか インターナショナル』『怪物の木こり』など。最新公開作に『まる』。待機作に『正体』。2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』への出演も発表されている。 望月ふみ
望月ふみ