仙道敦子の鬼気迫る表情が素晴らしい…岡田将生との芝居合戦で生まれた化学反応とは?『ザ・トラベルナース』第4話考察レビュー
恨まれてもいいから生きていてほしい
四織と同じく、加奈のことを思っていた人物がいる。歩だ。当時、助かる見込みがないと知っていた加奈は、日本にいる病弱の母親(四織)に本当のことが言えず、最期まで元気な姿を見せたい、と考えていた。 相談していた歩にも「嘘でもいいから、言葉だけでも『頑張りましょう』と言ってもらえませんか?」とお願いしていたのだ。 「頑張れ」は加奈からの依頼だったーー。なぜそれを四織に伝えないのか? 「自分の命は諦めているのに、歩への復讐は積極的」。これが彼女のモチベーションならば、このまま恨んでもらった方がいい。それで生きてくれるなら…と歩が憎まれ役を買って出た、というのが真相だった。 手術に向かう四織とすれ違っても歩は声をかけない。ただ、背中に向かって小さく「頑張ってください」とエールを送るのだった。
化学反応を起こす岡田の演技
今回、四織を演じた仙道敦子は、映画『白蛇抄』(1984)、トレンディドラマ『クリスマス・イブ』(1990、TBS系)など、数多くの名作に出演。歌手としても人気を博した俳優である。 結婚・出産後は約23年間芸能活動を休止していたが、ここ数年で俳優業に復帰。映画『ケイコ 目を澄ませて』(2022)、Netflixドラマ『極悪女王』(2024)などに出演している。 彼女が演じた四織は、当初、生きる希望を失っていた患者に見えたが、じつは歩に恨みを持っていて…という役どころ。特に、歩に怒りを露わにするシーンでは、鬼気迫る表情と台詞回しに圧倒された。類まれなる才能と多くの経験を重ねた仙道だからこそ生まれた名シーンと言えるだろう。SNSでも彼女の演技について絶賛する声があった。 そんな仙道と対峙した岡田の熱演にも触れておきたい。「恨まれてもいいから生きていてほしい」という歩の想いには胸が熱くなったし、最後の「頑張ってください」の一言は愛に溢れていてグッときた。歩の決断を咎めることなく見守る静も素晴らしい…。 第4話で、仙道敦子や中井貴一というベテラン俳優と化学反応を起こし、『ザ・トラベルナース』を盛り上げた岡田。今後もさまざまな俳優と対峙し、物語をさらに面白くしてくれるに違いない。 【著者プロフィール:浜瀬将樹】 1984年生まれ。フリーランスの編集・ライター。映画、ドラマ、バラエティー番組の会見取材、俳優さんや芸人さんなどのインタビュー、ドラマや俳優さんのコラム、お笑いのライブレポートなど、エンタメ系を中心に執筆している。