自宅に遺体放置で逮捕の男 母親を1人で介護 地域から孤立か 専門家は積極支援の必要性指摘
広島市安佐南区の自宅に母親の遺体を放置したとして5日に逮捕された男は母親を1人で介護していた。親子は地域との付き合いが少なく、孤立していた実態が浮かぶ。高齢化や核家族化が進み、家族の介護を1人で担う世帯も増える中、専門家は地域が積極的に支援に関わる必要性を指摘する。 事件の概要はこちら 地域住民や関係者によると、男と要介護者だった母親は2人暮らし。母親は市内の施設でデイサービスを利用していたが、昨年10月、金銭苦を理由に利用をやめたという。その後は男が1人で介護を担い、今年3月まで施設や地域包括支援センターの職員たちが定期的に見回りをしていた。 一方で男は自宅での介護について、「しんどい」と関係者に漏らすことがあった。ただ、地域住民との関係は希薄で、地元の社会福祉協議会の関係者は「親子のことを知らなかった。相談がなければ支援が難しい」と話す。以前、支援に関わっていた男性も「家族からSOSがなければ、どこまで踏み込んでいいか判断に迷う」と明かす。 厚生労働省が2022年に実施した調査では、要介護や要支援と認定された家族がいる世帯の割合は、親子や夫婦の核家族が42・1%で最も多い。認定者本人の1人暮らしが30・7%と続き、いずれも増加傾向だ。 県立広島大保健福祉学部の金子努教授(社会福祉)は、個人情報の取り扱いが厳しくなり、地域住民たちが自宅で介護する人に関わりにくくなっていると指摘。一方で「孤立は悪循環を生む。本人が求めていなくても行政や支援機関が動く仕組みや地域で見守る体制づくりが欠かせない」としている。
中国新聞社