知名度があまりにも低い「ローレンツ力」ってなにもの?…じつは身近に存在する「電磁気学的な力」の正体
ローレンツ力の身近な実用例「モーター」
ローレンツ力を使っているもので、我々の日常のいたるところにあるものと言えば、それはモーターだろう。 モーターは、電流が磁場から受けるローレンツ力を利用して歯車や車輪などを回転させる機構だ。ループを回転させるしくみは非常に単純だ。 直流モーターを例に説明しよう。磁石の間に挟み込むようにコイルを配置し、ここに電流を流す。これにより、コイルを回転させる力が生じる。 コイルを動かす駆動力となるのが、電流を流すことで磁場から生じるローレンツ力である。中学生のときに習った「フレミングの左手の法則」を思い出してほしい。 イラストのように、左手の3本の指を使って、力・磁場・電流の方向を指すようにする。磁場の向きが人差し指、電流の向きが中指、親指が力の向きとなる。イラストのように磁場と電流が直角に交わっていると、親指の方向に力が発生する。下の「直流モーター」のイラストでは、N極は下方向に力が働き、S極は上方向に力が働く。これによりコイルが反時計回りに回転する。 ただし、コイルが上の図の状態から反時計回りに90度回転すると、そのままの状態では、コイルに流れる電流の向きが反対になるので、磁場から生じるローレンツ力が逆向きになり、コイルが時計回りに回転するので、元の状態に戻ってしまう。 扇風機でいえば、羽根が右に回ったと思ったら、今度は左に回るような状態だ。歯車や車輪を回転させるためには、ループが一方向に回転し続ける必要があるので、これは具合が悪い。 これを解決するのが整流子とブラシというしくみだ。整流子は下のイラストのように、隙間をあえて作ることで、回転した際に、整流子とブラシが接しない瞬間が生じるようになっている。この際、コイルを回すローレンツ力は一瞬消えるが、慣性でコイルは回り続ける。再び、整流子がブラシに接すると、前と同じ向きに電流が流れるので、引き続き同じ向きにローレンツ力が働き、コイルは同じ方向に回り続けるというわけだ。 * さらに【つづき】〈「ローレンツ力」を使うモーターの原理は「発明当時」から全く変わっていなかった!じつはリニアモーターカーにも使われている「ローレンツ力」〉では、ローレンツ力の応用例などについてくわしくみていく。
田口 善弘(中央大学理工学部教授)