子育て中にがん闘病 患者の思いをつなぐ「キャンサーペアレンツ」とは 松山市の高橋理事に聞く
「がんのことを子どもにどう伝えればいいのか」「参観日に行きたいけど、立ったままではしんどい」ー。子育て中のがん患者が日々の思いをつづるコミュニティーサイト「キャンサーペアレンツ(CP)」が4月、2016年の開設から8年を迎えた。 サイトを運営する一般社団法人(東京)で理事を務めるのは愛媛県松山市在住の高橋智子さん(45)。創設者の西口洋平さんは20年に亡くなったが、生前発信し続けたメッセージ「つながりは、生きる力になる」を引き継ぎ、地道な活動に取り組んでいる。 18歳未満の子どもがいるがん患者は年間約5万6千人に上るとの推計もある中、CPが担う役割とは。高橋さんにサイトの特徴や今後の展望を聞いた。(原田茜) ◆会員は全国4500人超 Q どのようなサイトですか。 A 子どもを持つがん患者が日々の思いを日記として投稿したり、同じ境遇の人を探してオンライン上で交流できたりする場です。2024年5月現在、全国のおよそ4530人が会員登録しています。がんの種類やステージ、子どもの年代はさまざまです。 例えば「参観日に行きたいけど、体調が良くないから悩んでいる」といった内容は周囲に相談しにくく、医師も明確には答えづらい。CPでは同じような経験をした会員が「担任の先生に体調のことを相談してみたところ、保護者全員が椅子に座って参観できるようになったことがあります」などと返信してくれます。一人一人の状況は異なるので「私の場合は…」というスタンスでの投稿をお願いしています。 子どもがいると、つらくても弱音を吐きにくいケースが少なくありません。子育て世代は働き盛りでもあるため、仕事や家庭、地域のことなど悩みも多岐にわたります。CPが自分にとっての選択肢が見つかるきっかけになればと思っています。 ◆松山で7月に交流会 Q 愛媛での活動は。 A 愛媛では2018年、NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会(松山市)などと、がん患者や家族への理解を広めるシンポジウムを開きました。西口さんが登壇し、子どもになかなか病気を伝えられなかったこと、治療のため働き方が制約されて収入が減ったこと、必要としている支援を訴えました。 今年7月には、おれんじの会との合同企画として、子どものいる患者の交流会を松山市で開催する予定です。悩みや不安などを自由に語り合える機会になればと思います。 ◆地方こそオンラインコミュニティーを Q 患者の声を発信するための調査研究にも取り組んでいますね。 A 会員の協力を得て、国立がん研究センター東病院(千葉県)などの調査や研究に関わっています。最近では、医療関連分野の調査会社メディリード(東京)と共同で、患者のアピアランス(外見)について調査しました。調査や研究を通して知ってもらいたいのは、患者が抱える思いや課題です。生の声を社会に発信することで、がんになっても子育てしやすい、働きやすい環境が整備され、支援体制も充実していけばと願います。 愛媛をはじめ、四国の会員はまだ少ないのが現状です。でも、子どもがいる同世代のがん患者と実際に出会うことが少ない地方こそ、オンラインコミュニティーをうまく活用してほしい。人とのつながりは安心感や生きる力になります。「ひとりじゃない」と感じられる場所として、CPをこれからも続けていきたいです。
愛媛新聞社