AIが「97%」と答えを出しても残りの3%に賭けたい…アーチェリー山本博氏が今も現役を続ける“非合理“な理由
■ 勝者は101回目の挑戦に踏み出せる ――世の中は急速にデジタル化が進行しています。アーチェリーの世界に、そういったテクノロジーの波は到来しているのでしょうか。 山本 アーチェリーに限った話ではありませんが、最近ではどの競技においてもデジタル技術が浸透し、何百万円もする機材を買わなくてもスマートフォン1台で手軽に動作解析できるようになりました。私が大学生を指導する際も、送られてきた動画に線を引きながらアドバイスを入れて送り返す、という遠隔指導が可能になっています。 また、あらゆるデータが取得できるようになっているので、AIを活用することで、課題を克服するための答えを示してくれるようになるでしょうね。 ただ、その確率は、膨大なデータの中で最も可能性が高いものを示しているに過ぎない。どんなにデジタル技術が発達しても、最後は自分自身で「答え」を見つけなければなりません。97%の正解が示されても、残りの3%の中に自分の探していた答えがあるかもしれない。 大半の選手は数%の可能性は捨ててしまうんです。持論にはなりますが最終的にオリンピックでメダルを取れる選手というのは、その数%も捨てない選手ですよ。 試合で100回負け続けたとします。大半の選手は「次もきっと負けるだろう」と101回目にチャレンジしません。一方で「ひょっとしたら次の101回目は勝てるかもしれない」と一歩を踏み出す選手がいる。その選手は、200回負けても次の201回目にチャレンジしようとするでしょう。最終的に勝てるのはそういう選手なんです。 後編(「管理職は多くの『言葉』を持たなければならない」アーチェリー山本博氏のチーム全員を輝かせる指導論)に続く
堀尾 大悟