多くの人が絶対知らない、「硫黄島遺骨収集団員」ってどんな毎日を過ごしているのか?
【Q】硫黄島遺骨収集団員って、どんな毎日なの?
なぜ日本兵1万人が消えたままなのか、硫黄島で何が起きていたのか。 民間人の上陸が原則禁止された硫黄島に4度上陸し、日米の機密文書も徹底調査したノンフィクション『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』が9刷決定と話題だ。 【写真】日本兵1万人が行方不明、「硫黄島の驚きの光景…」 ふだん本を読まない人にも届き、「イッキ読みした」「熱意に胸打たれた」「泣いた」という読者の声も多く寄せられている。 ここでは、硫黄島に関する疑問・質問に答える。
【A】約2週間、極めて規律的な毎日でした
毎日朝の5時に起きて、日中、遺骨の捜索作業に汗を流し、夜の9時に就寝――。極めて規律的であり、健康的とも言える日々が約2週間続きました。 ちなみに私が2019年度の遺骨収集団に参加した際に配られた「タイムテーブル」は、以下の通りです。 【午前】 5:00 自衛隊基地内の宿舎で起床 5:40 食堂にて朝食(40分間) 7:20 作業着に着替えて宿舎前で朝礼、体操 7:40 発掘現場にて拝礼、遺骨捜索開始 10:40 午前の作業終了(実質3時間) 11:35 作業員食堂にて昼食(20分間) 【午後】 13:40 捜索活動を再開 15:40 午後の作業を終了(実質2時間) 16:55 作業員食堂にて夕食(20分間) 17:50 ミーティング(その日の作業報告など) 22:00 消灯
「作業時間は1日たったの5時間なの?」
そう思われる方もいるかもしれません。私も渡島前はそう思う1人でした。が、実際に作業に入ってみると、この時間設定でも40代半ばの私は毎日、へとへとになりました。高齢者にとっては、もっと大変でしょう。 作業は南国の炎天下で行われ、火山活動による地熱でサウナ状態の地下壕内での作業も少なくありません。ムカデの毒牙やサソリの毒針に襲われるかもしれないという心的ストレスもあります。 戦没者遺族は高齢化しており、団員は60歳以上が中心です。私の手元には十数年前の収集団のタイムテーブルもありますが、時間設定は同様でした。半世紀以上続く遺骨収集。団員が2週間、無事作業を続けられる「持続可能性」を考慮した結果、「1日5時間」となったのではないでしょうか。
酒井 聡平(北海道新聞記者)