シリア反体制派、アレッポ大部分を掌握 再び内戦激化の恐れ
在英民間団体「シリア人権観測所」などによると、内戦が続くシリアで11月30日、反体制派が北部の主要都市アレッポ中心部に到達し、市内東部にある国際空港を含む大部分を支配下に置いた。さらに、約120キロ離れた中部ハマ北郊の複数の街などを制圧した。政府軍はアレッポ周辺で空爆を行うとともに、奪還作戦の準備を進めており、戦闘が激化する可能性が高い。 【写真まとめ】ガザで4000人の子供が手足切断 ロイター通信などによると、政府軍はアレッポの大部分が制圧され、自軍も大きな被害を受けたため「再展開」を強いられていると明らかにした。政府軍は激しい抵抗はせずにアレッポから撤退したとの情報もある。アレッポが反体制派の支配下に置かれるのは、2016年に政府軍が奪還して以来となる。これまで反体制派は北西部イドリブ県など一部地域に追い詰められていた。 シリア内戦では、ロシアとイランを後ろ盾とするアサド政権と、トルコが支援する反体制派が対決する構図が続いてきたが、アサド政権側が軍事的な優位を確保。20年にロシアとトルコが停戦合意を結んでからは膠着(こうちゃく)状態が続いていた。 ロシアのラブロフ外相とトルコのフィダン外相は11月30日に電話協議し、シリア情勢について議論した。いずれも戦闘拡大に懸念を表明したという。 一方、反体制派がアレッポに侵攻したことに関連し、米国家安全保障会議(NSC)のサベット報道官は30日の声明で、「情勢を注視しており、地域の国々と連絡を取り合っている」と説明した。その上で、アサド政権に対して、国連安保理決議に基づく内戦の政治的な解決のプロセスへの関与を拒んできたことが、反体制派による攻勢などの原因だとして批判した。 サベット氏はシリアの現状について、アサド政権がロシアとイランに依存していることが背景にあると指摘。今回の侵攻は米国がテロ組織に指定している「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)が主導しているとし、米国は無関係だと強調した。 また「緊張緩和や市民の保護、政治的なプロセスを強く求める」と訴えたほか、過激派組織「イスラム国」(IS)が再び台頭することがないよう、シリアに駐留する米軍の人員や拠点を防衛するとも述べた。 中東では昨年10月にパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘が始まって以来、シリアを含む周辺国の親イラン武装組織とイスラエルの間で交戦が続いており、地域全体が不安定化している。HTSはこうした隙(すき)に乗じて攻勢に出た可能性があり、シリア内戦が再び激化すれば、地域の混乱はさらに深まる恐れがある。【カイロ金子淳、ワシントン松井聡】