「原油価格は余程のことがない限り下がらない」と断言できるワケ
もっとも、これらの産油国の生産の増加は、アメリカがシェールオイル、ブラジルは深海油田、カナダはオイルサンドと、どれも生産コストの高いものであることを忘れてはならない。 今の1バレル=80ドル前後の水準からもう一段石油価格が下がることがあれば、こうした産油国の生産は採算が合わなくなることから減少、一方でOPECプラスは追加減産を継続、価格動向次第では減産幅を拡大することもありうる。 アメリカをはじめ、高インフレに頭を悩まされている消費国は、その一因となっている石油価格の下落を望んでいるのかもしれない。だが、こうした構造的な問題を考えればわかるように、それは実現不可能である可能性が極めて高い。
石油価格が上昇基調を維持するなら、当然ながらアメリカを中心にインフレの高止まりは避けられない。金融当局が早期に利下げに転じるといった、インフレに対して楽観的な見方をしている人々は、改めて原油先物相場の先行きについて考えてみる必要があるのではないか。
松本 英毅 :NY在住コモディティトレーダー