新日本酒紀行「LINNE 800」
● 前人未到のクロスボタニカルで挑む酒 前人未到の米の酒を追求するLINNE代表の今井翔也さん。米麹だけでなく、大麦麹や蕎麦麹など、今までにない原料の組み合わせ、クロスボタニカルで造るクラフトサケ「800(ヤオ)」に挑む。800とは八百万(やおよろず)の神からの命名だ。 【写真】「酒造りのこだわり」はこちら! 「まだ誰も造ってない酒を造りたい」と意気込む今井さん。群馬県の聖酒造の三男として生まれた。東京大学農学部卒業後にオイシックスへ就職。その後、日本酒スタートアップのWAKAZEの創業に参画し、四つの蔵で修業した。2018年から24年の春まで、日仏米拠点の技術責任者を務めたが、「日本でしか造れない酒に挑みたい」と独立。帰国後、種麹店や焼酎蔵、茶農家など伝統産業を巡る中、京都の宮大工、匠弘堂(しようこうどう)との出合いで、醸造家との共通点を発見。宮大工は日本の英知の固まりで、寿命を超える時間に耐える神社や寺を造る存在と分かり、道具の多さと使いこなし方にも驚いた。「醸造家も、より多くの道具を使えば表現力の幅が広がり、今までにない酒を造れるのではないか」と自問し、その道具の一つとして麹に行き着く。
現在は醸造所を持たず、福島県のhaccobaや、新潟県の阿部酒造の設備を借りて醸造を行い、10月末からは福岡県のLIBROMで芋麹の酒に挑む。今までにない穀物麹を使ったクロスボタニカルの酒を手掛けつつ、京都に自社の醸造所を設ける計画だ。「世界中で湧き起こる発酵文化の流れを先導したい」と今井さん。異を醸す酒で、新しい米の酒の世界を切り開く。
*クラウドファンディングを開始。詳細はHPを参照。https://linne.inc (酒食ジャーナリスト 山本洋子) ※週刊ダイヤモンド2024年10月26日号より転載
山本洋子