サンフレッチェ広島から世界へ羽ばたいた、ユース出身選手たち<OBが語る>
夏の移籍ウインドーが開き、選手の入れ替わりが活発になった今シーズン。サンフレッチェ広島からは3選手が世界へと羽ばたいた。ここではOB・吉田安孝氏が、広島出身・広島ユースで育ち、海外挑戦を決めた選手をピックアップして解説。さらに、上位を狙う後半戦への期待も語る。(取材は2024年6月) 【写真】今季ここまで11ゴールを挙げた大橋祐紀も、海外移籍を決めた ◆ 世界へ羽ばたく紫の戦士たち。出場機会争いもさらに熾烈に 毎月注目の選手を紹介している本連載ですが、今回はこの夏、海を渡った広島ユース育ちの選手たちについてお話ししたいと思います。 まずは川村拓夢。彼は広島出身で、愛媛FCへのレンタル移籍を経て2022年にサンフレッチェに復帰しました。元々のポテンシャルが高かったことに加え、スキッベ監督との出会ったことでその才能を見出された選手の一人だと言えるでしょう。青山敏弘がミシャ(ペトロビッチ)監督に出会ったように、彼にとってはスキッベ監督という指揮官との出会いが非常に大きかったのでしょう。 川村の魅力のひとつは、ピッチ上のプレーはもちろん、ピッチ外でも素直で、真面目な性格もあげられます。真面目であるがゆえに悩んでしまうこともあったと思いますが、そこをスキッベ監督がうまく刺激を与えながら伸ばしていったのだと思います。日本代表に選ばれる機会も増えて出場機会を得るなかで、徐々に自信がついていき、その自信が表情にも現れていたように思います。プレーの面では前への推進力、それも、2列目、3列目のボランチの位置から最前線まで飛び出していけるところ、パンチ力のあるミドルシュートも彼の代名詞といえるでしょう。 残念ながら、移籍先のザルツブルグでのトレーニング中に負傷してしまったというニュースも入ってきましたが、アクシデントを乗り越えてくれることを信じたいと思います。広島で育った選手たちが海外で活躍するのはすばらしいことですし、地方クラブのあるべき姿でもあると思います。 同じく広島出身でユース育ちの野津田岳人も、今夏、タイ・リーグへの移籍が決まりました。タイというのは正直意外ではありましたが、彼が日本代表としてプレーした五輪で監督を務めた手倉森誠監督が指揮するクラブですし、必要とされる場所があるというのは幸せなことです。 チームとしては彼らが抜けた穴をどう埋めるかが課題になりますが、サンフレッチェの強みは、複数ポジションで活躍できる選手をたくさん抱えているところです。 満田誠にしても、東俊希にしても、新井直人にしても、複数ポジションで結果を出しながら、さらに成長を見せてくれている選手が複数いるというのは頼もしい限りです。ケガ人や選手の入れ替わりもあり選手起用で悩ましい部分もあるかもしれませんが、その分、ここまで出場機会の少なかった選手たちが奮起して勝利に貢献してくれるに違いありません。いよいよ厳しい夏本番を迎えますが、全員の力で一つでも勝ち上がっていけるように期待したいと思います。
広島アスリートマガジン編集部