シリア・アサド政権崩壊から1週間 国民融和、諸外国の協調…課題が山積
シリアでアサド政権が崩壊して15日で1週間となった。暫定政府が発足して国家再生に向けた政治プロセスが始動したが、国民融和に加え、米欧や周辺国が一致して復興を支援できるかなど困難な課題が山積している。中東産原油に依存する日本も無縁ではない。 ■イスラム過激派のイメージ打破狙う 旧反体制派を主導するのはイスラム過激派「シリア解放機構」(HTS)の指導者ジャウラニ氏だ。内戦下で反体制派が設立した「シリア救国政府」のトップ、ムハンマド・バシル氏を暫定政府首相に指名した。来年3月1日まで活動予定の暫定政府はアサド政権下の国会と憲法を停止し、憲法改正も行う。 国際テロ組織アルカーイダと決別した過去を持つジャウラニ氏は、イスラム過激派という自らのイメージの打破に努めてきた。英BBC放送(電子版)によると、ジャウラニ氏は拠点の北西部イドリブで公共サービスや地域の再建を進め、「近代的で穏健な印象」を打ち出してきた半面、こうした戦術はイスラム保守層の反発を買った。 それでも、米国がHTSのテロ組織指定を見直すかは現時点では不明だ。国民融和を目指すというジャウラニ氏の意向が本心だとしても、障害は国内外に残っている。 ■ロシアとイランは軍事拠点を失う危機 アサド政権の後ろ盾だったロシアとイランは、シリアに有する軍事拠点を失う危機に直面した。 ロイター通信は14日、シリア駐留ロシア軍が組織再編のため一部拠点から撤退し、装備品を部分的に国外搬出しているとの見方を報じた。露政府筋は欧州や地中海をにらむシリア国内の空軍、海軍基地からは撤収しないと強調するが、暫定政府側は露軍駐留の可否は「今後議論する問題」だとしている。 イランはアサド政権崩壊直後から暫定政府側に接触。イランにとってシリアはレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラへの物資供給に不可欠な戦略拠点だ。是が非でも権益を維持したいとの思惑が透けてみえる。 アサド政権と対立した米欧やトルコの外相らは14日、サウジアラビアなどアラブ諸国の外相らとシリア情勢を協議した。政権崩壊で外交上の主導権がロシア、イランから移りそうな気配だ。