「異例に早い解散総選挙」「1強多弱が変わる可能性」 飯尾教授ら3政治学者が討論
消費税と一票の格差
安倍首相は、衆院解散後の記者会見で「税に関わることなので国民に信を問いたい」と語った。その説明に対して、飯尾氏は「消費税は3党合意で決めたこと。前回の総選挙ではそれほど争点になっていない。それをわざわざ争点にして総選挙で訴えるということは3党合意を破棄して自分で新たな道を歩もうとしている可能性がある」との見立てを語った。 今回の選挙は「一票の格差」の観点から疑問を呈する声もある。中北氏は「『0増5減』はされたが抜本改革はなされないまま。野田さんと安倍さんの党首討論でも約束されたが積み残しになっている。これは『大義』以前に民主主義の根底のルール。与野党で歩み寄って何らかの方策を決めるべきだった。大きな問題が残るといわざるを得ない」と述べた。
選挙の意味
飯尾氏は「将来の方向性を有権者が選べる選挙。現在の与野党の『1強多弱』状態が整理される可能性がある」と今回の総選挙の意味を語る。「自民党内もどうなるかわからない。自民党が議席を減らせば確実に不満持つ人も党内に出てくる」といい、党内の「安倍1強」状態が崩れるリスクもあるという。「そうすると次の総選挙が見えてくる。政権交代はないと思っているだろうが有権者次第。解散した側の思い通りにはならない」。 中北氏は与野党だけでなく与党内の配置が変わる可能性を指摘する。「自民党が単独過半数を割れば公明のバーゲニングパワーが高くなる。そうすると安保政策にも影響し、安倍カラはーは失速する」。また、執行部刷新で体勢を立て直した民主党が議席数100を超えてくると上り調子になるといい、「中長期では意外に大きな影響を与えるかもしれない」と語った。 逢坂氏は、今回の解散が第2次中曽根内閣の「死んだふり解散(1986年)」、第1次佐藤内閣の「黒い霧解散(1966年)」を参考にしているという見方があることを受けて、「よく勉強されている解散」と感想を語る。「選挙期間が短い。リスクを減らすためになるべく議論避けて短期決戦でやる。選挙で勝つという意味ではうまい」。ただ、むしろ「選挙後」の安倍政権に関心があるという。「選挙に勝ったからと言って景気がよくなるわけではない。外交状況が極端に変わるわけでもない。中曽根さんも佐藤さんも選挙には勝ったが、やりたかったことはできなかった。テクニカルに選挙で勝ったことのツケは回ってくるのか」と歴代の政権の事例を基に語った。