ハリルは試合勘のない宇佐美をなぜ代表召集したのか?
今月23日から再開されるW杯アジア最終予選のUAE(アラブ首長国連邦)代表戦(アル・アイン)、同28日のタイ代表戦(埼玉スタジアム)に臨む日本代表メンバー25人が16日、日本サッカー協会から発表された。 所属クラブで出場機会を得ていないGK川島永嗣(FCメス)、DF長友佑都(インテル)、そしてFW本田圭佑(ACミラン)のベテラン勢は、試合に出ていない選手は招集しない、というヴァイッド・ハリルホジッチ監督のポリシーに反する形で、そろってメンバーに名前を連ねた。 都内で記者会見に臨んだ指揮官は、昨年9月の対戦でまさかの苦杯をなめたUAEのホームに乗り込む23日の大一番が、特異な状況下で行われることを理由として挙げた。 「数多くのプレッシャーがあり、自分たちに悪意のある状況で臨む場合もある。そこで私は選手の経験値を必要とした」 もっとも、個々の経験値をポリシーより優先させたケースにあてはまらない選手も招集されている。所属するアウグスブルクで同じく出場機会を得られない状況に故障も追い打ちをかける形で、昨年9月を最後に代表から遠ざかっていたFW宇佐美貴史だ。 先月17日のバイヤー・レバークーゼン戦で、昨夏にガンバ大阪から移籍後初めて先発フル出場を果たした宇佐美だったが、その後は3試合連続で再びリザーブに甘んじている。 現時点で先発3回を含めて8試合に出場。プレー時間296分間は本田よりは多いものの、同じ左ウイングを主戦場とする原口元気(ヘルタ・ベルリン)の先発19回を含めた23試合、1,711分間には遠く及ばない。 何よりも24歳の宇佐美には、本田や長友、川島のようにW杯本大会などの大舞台に出場した経験がない。それでも代表に復帰させた理由は、同じFW陣でもハリルホジッチ監督が求める役割の違いがある。 今回は7人が招集されたFW陣だが、いずれもゴールを求められるうえで、さらに3つのタイプに分類される。まずは相手の屈強なCBのプレッシャーを受けながらも、ボールをキープできるフィジカルの強さをもつ選手。7人のなかでは、大迫勇也(ケルン)と本田が当てはまるだろう。 次は相手の最終ラインの裏を狙える速さをもつ選手。原口と浅野拓磨(シュツットガルト)、今冬に移籍したヘントでゴールラッシュを演じている久保裕也、俊足ではないものの一瞬のスプリント力に長けた岡崎慎司(レスター・シティ)となる。 そして最後が個の力で局面を打開できる選手、いわゆるジョーカーだ。代表発表に先駆けて行われたインタビュー取材で、ハリルホジッチ監督は日本サッカー界の現状をこう指摘していた。 「自分でボールをもって仕掛けて、違いを生み出せる選手が2、3人しかいない。育成年代でそのようなプレーをあまりさせていないのではないかと、私は感じている。自分で仕掛けていくことが推奨されていないので、ストライカーがあまり育たないのではないか、と」