照ノ富士は「後継者」に大の里を指名? 横審の山内委員長「そんなメッセージを託したように思えた」
大相撲初場所(12日初日、両国国技館)に向けた横綱審議委員会(横審)による稽古総見が6日、国技館内の相撲教習所で行われ、両膝痛や糖尿病で2場所連続全休からの再起を期す横綱照ノ富士(33)は大関大の里(24)を指名し、連続7番取って3勝4敗だった。ともに初の「綱とり」に挑む大関琴桜(27)と豊昇龍(25)とは相撲を取らず、山内昌之委員長(77)=東大名誉教授=は照ノ富士が大の里を「後継者」とする見方を示した。 55年ぶりとなる横綱同時昇進が期待される琴桜と豊昇龍が傍らに立って指名を待つなか、横綱は大の里と相撲を取り続けた。左上手を取って力強い寄り、その上手を切って鋭く寄り返す大の里。四つに組む力相撲で、照ノ富士の上半身はみるみる赤みを帯びていった。 「これで(調整の)ペースを少しずつ上げていくことができれば。あとは感覚を戻すだけじゃないか」 年が明けて相撲を取る稽古はこの日が初めて。3場所ぶりの出場へ向け表情は明るい。2場所連続全休中。昨年は15日間皆勤が優勝した2場所にとどまったが、初場所出場の可否を問われると「誰が休むと言った?」と気迫を漂わせる。横審・山内委員長も「思ったより回復していた」。 横綱昇進を目指す2大関ではなく、大の里とだけ相撲を取ったことに八角理事長(元横綱北勝海)は「稽古相手にちょうどよかったのでは」と口にした。同じ右四つ。組みやすいこともあるが、任期満了に伴い初場所後に退任する山内委員長は深読みをしていた。「照ノ富士は(大の里を)あとを託す後継者としたように認知した。そんなメッセージを託したように思えた」。 照ノ富士は12月の冬巡業中、兵庫・宝塚市で行われた巡業で1度だけ相撲を取った。このときも大の里を指名。大の里は横綱からの突然の申し出に驚きながら連続8番取っている。人と競い勝負に勝てば「名人」の座には就ける。「達人」は常人には届かない域に到達して成り立つ。だから達人は、達人を知る。(奥村展也) ★大の里は大関同士の申し合いにも参加
大の里は琴桜、豊昇龍との大関同士の申し合い(勝った者が何度も取る)にも参加して5勝6敗。精力的に計18番をこなした。「やれることをやった。いい経験ができた」。昨年は2度賜杯を抱いたが、11月の九州場所では9勝6敗。初場所では綱とりとなる琴桜、豊昇龍を追いかける。「今年は全場所で優勝争いができるようにしたい」と前を向いた。