三笘薫らを独自のアルゴリズムで評価 ブライトンの躍進を支える会長はイギリス有数のポーカープレーヤー
【ファンにとって「夢のような現在」】 ブルーム会長は15年前に愛するクラブを窮地から救い、総額40億ポンドとも言われる私財を投じてきた。その間に、チームは3部から粘り強く上昇を続け、2017年にプレミアリーグに昇格。新しいスタジアムと最新鋭のトレーニングセンターも作った。それは長くブライトンをサポートしてきたファンにとっては、「夢のような現在」だ。1年半前と数週間前に合わせてひと月ほど、現地を取材した筆者は、本当にたくさんのサポーターから、そうした心境を聞いた。 それを実現させたブルーム会長は、救世主と崇められて当然だが、小柄なビジネスマンはいまだにアウェー戦に電車で向かい、時にはファンと一緒に歌ったりするという。どれだけ成功しようと、自分にとって本当に大事なものが何かを、しかと心得ているのだろう。 2015-16シーズン、チャンピオンシップからプレミアリーグへの昇格プレーオフでチームがシェフィールド・ウェンズデイに惜敗すると、ブルーム会長は更衣室へ行った。 「床で打ちひしがれている選手と同じように、私も床に座った。そして周りの選手たちに、『この経験は君たちを強くする。ここからまた這い上がるぞ。来シーズンにやってやろうぜ』と言ったんだ」 まるで優れた監督の言葉みたいだ。そして気持ちを立て直した選手たちは、次のシーズンにクラブ史上初のプレミアリーグ昇格を勝ち取っている。 地域との結びつきよりも、他国からの資本家を大事にするようなクラブが大半を占める今のプレミアリーグにおいて、ブライトンはユニークで貴重だ。英国南部の楽しいビーチタウンを本拠とするクラブは、正真正銘の地元サポーターに賢く運営されている。 後編「今季のブライトンを率いる31歳の青年監督」へつづく>>
井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi