もう観られる!『オッペンハイマー』『シビル・ウォー』『憐れみの3章』など早くも配信中の2024映画を振り返り
2024年も多くの話題作が公開されてきたが、早くも次々と配信がスタートしている。劇場で観られなかった人はもちろん、すでに観た人が興奮や感動をよみがえらせるために、オススメの洋画を公開順に振り返っていく。 【写真を見る】ベラを蘇生させた天才外科医バクスターにはウィレム・デフォー(『哀れなるものたち』) ■アカデミー賞で好成績、美術&衣装にも心奪われる『哀れなるものたち』 第96回アカデミー賞では作品賞など11部門にノミネートされ、エマ・ストーンの主演女優賞など4部門で受賞。妊娠中の女性ベラ(ストーン)が一度は命を絶つも、天才外科医によって胎児の脳を移植され生き返るという、かなり奇抜な物語を、鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が、ベラが“世界を知る”成長ドラマとして構築。 各地を旅するベラの冒険劇でもあり、美術や衣装で“おしゃれ”なムードを強調しながら、センセーショナルな描写を惜しげもなく投入。一人の女性が覚醒するプロセスに引き込んでいく。 ■鬼才&名優のタッグで贈る、新体験の怪作『ボーはおそれている』 『ミッドサマー』(19)などで人気監督になったアリ・アスターが、『ジョーカー』(19)のホアキン・フェニックスと組んだことで期待値が上がった新作。日常生活でちょっとしたことで不安になるボー(フェニックス)が、母親が死んだという知らせを受け、その母のもとへ向かう旅に、奇怪な出来事が重なっていく。 現実か、主人公ボーの妄想か。そのボーダーが曖昧で、狂気と不条理、ユーモアも混じり合う、ほかの映画とはまったく違う体験を届ける怪作。3時間の長尺なので配信で観るには適しているかも。 ■宇宙を舞台にした戦いが本格化していく『デューン 砂の惑星 PART2』 2021年の1作目に続く、壮大なSFアクション叙事詩の第2作。その血筋から命をねらわれるポール(ティモシー・シャラメ)が、惑星デューンで生活する砂漠の民フレメンの女性らと組んで反撃に転じる。 前作に続いてドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が繰りだすビジュアルは圧巻の一言。夕陽の美しさ、砂漠や戦闘が行われるスタジアムの広大さ、そしてアクションの見やすさも、このシリーズは極上だ。新たなキャストでは、『エルヴィス』(22)のオースティン・バトラーの冷血さ、恐ろしさが、強烈なインパクトとして残るはず。 ■アカデミー賞を席巻!“原爆の父”の半生描く『オッペンハイマー』 第96回アカデミー賞で作品賞など最多7冠に輝き、大きな話題を呼んだ一作。“原爆の父”と呼ばれた物理学者、ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)の半生を、『ダークナイト』(08)などのクリストファー・ノーランが重厚なタッチで描いた。 原子爆弾開発の過程から、その原爆の日本への投下に対するオッペンハイマーの悔恨、さらに冷戦時代に受けた批判などを通し、一人の科学者の内面が浮き彫りに。原爆被害が直接的に描写されなかったことや、科学の急速な発展への疑問など、改めて観ることで作り手の意図を探ってほしい。 ■『-1.0』との観比べも!『ゴジラxコング 新たなる帝国』 ゴジラとキングコングという2大怪獣キャラが競演した第2弾。ゴジラは地上、コングは地下と、それぞれのテリトリーを守っていたが、新たな脅威が生まれ、両者の激闘が余儀なくされる。 アカデミー賞で日本映画『ゴジラ-1.0』(23)が視覚効果賞を受賞した直後の公開だったので、両方を観比べることでも話題に。今回はモスラも登場し、意外な活躍を見せる。豪快なノリが優先され、ツッコミどころも楽しめる“お祭り”的なモンスター・エンタテインメントだ。 ■マーベルの人気者がついにタッグ『デッドプール&ウルヴァリン』 世界興行収入で2024年の第2位(実写では1位)と、特大ヒットを記録。マーベルの超人気キャラ2人が初めて映画で共演するとあって、期待どおりの痛快アクションが完成された。 世界の運命を決めるミッションをめぐり、そのカギを握るウルヴァリンを捜してデッドプールがマルチバースを奔走。デッドプールの悪ノリは前2作以上に加速し、サプライズで登場するキャラも多数。デッドプール役ライアン・レイノルズとウルヴァリン役ヒュー・ジャックマンの抜群な相性だけで飽きさせない快作だ。 ■世界一の国家が分断してしまったら…『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 近未来のアメリカは、国内が分断されているというショッキングな設定。カリフォルニアとテキサスが同盟を組み、政府軍との戦闘が勃発する。その状況で、ジャーナリストらの一団が、ニューヨークからワシントンD.C.を目指して戦地を進んでいく。 行く先々での彼らの体験を生々しく表現したのは、『エクス・マキナ』(16)などのアレックス・ガーランド監督。日本ではあえて10月に劇場公開したことで、11月のアメリカ大統領選とシンクロ。アメリカの分断がリアルに受け止められ、スマッシュヒットとなった。 ■世界で一人のサンタにまさかの危機!?『レッド・ワン』 人気スターが持ち前の魅力を発揮し、子どもから大人まであらゆる世代にアピールする、ハリウッドらしいアクション娯楽作。たった一人のサンタクロースが、クリスマスの1日に世界中の家庭を訪問するという設定がユニークで、細部までオモチャ箱のようなサンタの国の描写にテンションが上がる。 サンタの護衛隊長役でドウェイン・ジョンソンが肉体アクションを全開にし、サンタ誘拐に加担した賞金稼ぎの男に扮したクリス・エヴァンスがハマリ役。バディムービーの魅力も備わって、2024年のクリスマスシーズンを彩った。 ■まったく別の物語が交錯していく…『憐れみの3章』 『哀れなるものたち』に続く、ヨルゴス・ランティモス監督の2024年の2作目。事故を起こすことを強要される男。海難事故から生還した妻が別人では…という疑惑。カルト宗教の新たな教祖の探索。そんな3つの無関係なドラマをオムニバス形式で描くのだが、共通のキャストが3つのパートで別の役を演じるという演出が斬新。やがて3つのパートにリンクが見えてくるという不思議な効果をもたらす野心作だ。キャストの一人、ジェシー・プレモンスはカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。 こうして公開された映画を振り返ると、先鋭的でチャレンジ精神にあふれる作品も多かった2024年。年が明けると、アカデミー賞に絡む作品も数多く登場するうえ、2025年は特大ヒットを見込まれる話題作が相次ぐ。どんな映画に出会えるのか、いまから期待値を上げて待っていてほしい。 文/斉藤博昭
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