がんの新たな問題 「医療費120万円」がん患う母が嘆く“負担の重さ” かかる前に知っておきたい、がんとお金の話
差額ベッド代は医療機関によって異なり、数万円かかるところも。また、以前はテレビ代だったが、今はスマホなどで使うWi-Fi代が必要となる場合もある。 通院であれば自宅-病院間の交通費も必要で、小さい子どもがいて延長保育や時間外保育などが必要であれば、それらの費用もかかる。 がんの治療が続く場合、これらの費用を合わせて考えなければならない。 6年前、会社を退職した直後に卵巣がんと診断された自営業の吉田ゆりさんは、「治療にいくらかかるのかわからず、蓄えも減っていく。1歳と3歳の子どもがいたので、子どもの預け先や生活支援をお願いするにも、どこに何を相談したらよいかわからず、パニックになりました」と振り返る。
吉田さんによると、最初にかかった医療費は、検査や手術、入院の費用に食事代やレンタル品などすべて込みで約120万円。「このままでは生活が成り立たないのではないかと、愕然となりました」。 幸い吉田さんの場合は、公的な支援制度である高額療養費制度を利用し、支払額を18万円ほどに抑えられた。ほかにも、加入していた民間のがん保険で、診断一時金などが下りたため、お金に困ることなく治療を受けることができた。 保険会社に提出が必要な書類や主治医に記載を依頼する書類などに関するアドバイスは、がん保険の外交員に教えてもらったという。
吉田さんはこうした自身の経験を、がんと診断された人に役立てたいと、がんサバイバーの仲間とともに一般社団法人「がんと働く応援団」を立ち上げ、『がん防災マニュアル』という冊子を作って、希望する人たちに配布している。 ■経済的な理由で「治療拒否」も 日本には国民皆保険という制度があり、ほかにも医療費の負担を軽減する公的制度があるので、海外のように貧困が理由で治療を受けられないことは、原則ない。 だが、医療費の支出が抑えられたとしても、がんによる退職などの理由で収入が減った状態では、大きな負担になることもある。