がんの新たな問題 「医療費120万円」がん患う母が嘆く“負担の重さ” かかる前に知っておきたい、がんとお金の話
標準治療であれば健康保険が使えるので、現役世代の患者であれば3割負担ですみ、さらに軽減される制度もあるが、「がんとお金」の話を避けられないもう1つの背景だ。 がん治療をとりまくお金の問題としては、第一に「自分の治療にいくらかかるのか」が、概算の情報はあっても、事前には確定しないという実態がある。 もともと医療は患者それぞれの状態に合わせて行われるもので、かつ不確実性があるので、やむをえないとはいえ、不安の種であることは確かだ。
そしてもう1つは、「治療のことで頭がいっぱいになり、お金のことまで頭が回らない」ということだ。 がんとお金・仕事に関して患者への情報提供や相談対応に取り組むNPO法人「がんと暮らしを考える会」の理事長で看護師の賢見卓也さんは、「がんと診断された当初、患者さんは『どうすれば助かるか』『どんな治療を受けたらよいのか』ということで頭がいっぱいになり、お金の問題は二の次になるものです」と言う。 「治療が2カ月、3カ月と続くにつれ、医療費の支払いはもちろん、通院やそれ以外の出費、さらには仕事を休まなければならないことによる収入の減少などの要素が絡んできます。これがいつまで続くのかという気持ちが生まれます」(賢見さん)
■がん治療で見えない支出 「がん治療で見えない支出」の存在も忘れてはならない。 がんにかかるお金には、大きく分けて「(直接の)医療費」「療養に必要な費用」「その他の費用」がある。 入院、検査、手術、抗がん剤治療などの費用が直接の医療費で、標準治療であれば健康保険が使える。厚生労働省のデータによると、がんの平均医療費(入院1件あたり)は約80万円。3割負担なら約24万円となる。 加えて、入院時の食事代は1食460円、1日3食で1380円が自己負担だ(住民税非課税世帯などを除く)。入院ベッド代はかからないが、個室を希望すれば、差額ベッド代として1日プラスアルファの料金を自費で負担することになる。