20世紀を代表するファッションリーダー、ウィンザー公が流行らせた「アーガイル・チェック」とは?
「大人の名品図鑑」チェック編 #5
秋冬の季節になると俄然見る機会が増える「チェック柄」。着こなしのアクセントになり、カジュアルな雰囲気を醸し出せるのが強みだ。今季のファッションはクラシック回帰の傾向もあり、柄のバリエーションも豊富に揃う。今回は代表的なチェック柄のアイテムを取り上げ、その歴史や逸話を探ってみる。 【写真】ウィンザー公が仕掛け人になって流行したアイテム、「アーガイル・チェック」。
エドワード8世は歴代最短、1年に満たない在位期間で退位した英国国王だ。国王という地位よりもアメリカ人女性シンプソン夫人との結婚を選び、その恋は「王冠をかけた恋」として知られ、退位してからはウィンザー侯爵、通称ウィンザー公と呼ばれていた。彼は20世紀を代表するファッションリーダーとして知られ、ネクタイの結び方の「ウィンザー・ノット」のように、彼の名を冠したファッション用語も多い。グレンチェックのスーツ、ワイドスプレッドカラーのドレスシャツ、スエードシューズ、ベレー帽など、彼が愛用することで世界的に流行したメンズアイテムも数多い。 今回紹介する「アーガイル・チェック」も、ウィンザー公が仕掛け人になって流行したアイテムのひとつだ。皇太子時代のウィンザー公がゴルフをする時に身に着けていたのが、「アーガイル・チェック」の靴下。1922年、スコットランドのセント・アンドリュースのゴルフ場に現れたウィンザー公は、ノーフォークジャケットにニッカーボッカーズというクラシックなスタイル。太めのボトムスには「アーガイル・チェック」のホーズ、つまり長い靴下を合わせており、この時、彼がインナーに着ていたフェアアイル柄のセーターとともに流行に敏感な人たちに注目されて流行、後に英国を象徴するトラッドアイテムとなった。 細いラインと、菱形の連続で構成されるこの「アーガイル・チェック」は、実は「タータン・チェック」の一種で、スコットランドが発祥だ。『男の服飾事典』(婦人画報社)によれば、「スコットランドの大氏族キャンベルの分家コーリン・キャンベル(初代アーガイル伯爵)の名に因んだもの」で、「ダイヤ柄」「菱形模様」、あるいは「斜め格子」とも呼ばれていたと記されている。 「アーガイル・チェック」の靴下を想像してもらえばわかると思うが、正方形のタータンデザインを45度回転して編むため、菱形に見える。ちなみに名前の由来になったスコットランドのキャンベル連隊は1600年代からこの柄の手編みに靴下を全員着用したという。
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