「ショートゲームシェフ×トム・キム」に密着 アプローチ専門コーチは何を教える?
マクラクリン氏は、おもむろにグリーン周りの1点にボールを置き、「あそこに打て」と言わんばかりに、グリーン上のいくつかあるピンのうちの一つを指さした。キムはウェッジを一本選び、素振りをしてイメージを膨らませたのち、チップショットで寄せていった。結果は2mほどショート。実に悔しそうな表情をみせるキム。同じ場所からもう1球打つのかと思いきや、2人は違う場所に移動した。 マクラクリン氏は、続いてラフにボールを置き、ピンを指さす。キムは再びピンを狙ってボールを打ち、これは“OKゾーン”へ。2人は続けて次の場所を探しに移動する。
見ていると練習はすべて1球ずつ。グリーン周りを一周しながら、バンカーも含めてあらゆるライとグリーン状況に応じたアプローチを打ち進める。左足下がり、つま先上がり、芝の薄いライ、深いラフ、ピンがショートサイド、ピンが段の奥など、一つとして同じ状況では打たせない。時にキムはピンのそばまで行ってグリーンのラインを読むなど、実戦のように時間をかけて行っているのが印象的だった。
これはいわゆる「ランダム」という、毎打状況を変える練習法。ミスをしても打ち直しができないため、より実戦に近い、まさに本番のような練習だ。アプローチの基礎である「打ち方」の練習は事前に十分やってきた上で、試合前の実戦練習(応用)を行っているのだろう。 その後、グリーンから少し離れた平らな場所に移動し、50ydほどのショット練習を始めた。手前ピン、真ん中のピン、奥ピンと狙いを変え、足(ラン)を使うのか、高さで止めるのか、いろいろな状況を想定して3つのピンを打ち分ける。手前ピンは足を使えないので高さで止め、奥ピンは足を使いながら寄せていく。いかにも実戦に則した練習に見え、試合の状況がイメージできた。
練習時間はトータル40分ぐらい。一通りのセッションが終わると、キムはマクラクリン氏に別れを告げて打撃練習場に向かった。続けてサム・バーンズがアプローチ練習場に現れ、マクラクリン氏と同じような練習をイチからスタート。良いコーチには、次から次へと人が集まってくる。そんなシーンを垣間見た気がした。(編集部/服部謙二郎)