英とも米とも違う日本の「政治主導」 旧民主党と変わらない安倍政権
「森友学園」と「加計学園」の2つの疑惑で共通して追及されたのは「官僚による忖度」でした。その背景の一つとして挙げられたのが2014年に設置された「内閣人事局」。小泉政権以降の自民党政権、旧民主党政権を通じて同趣旨の組織が構想され、2014年の第二次安倍内閣で設置されました。幹部公務員人事に内閣が関与することで「政治主導」を進めるための改革でしたが、これをどう見るか。政治ジャーナリストの田中良紹氏に寄稿してもらいました。
官僚が忖度した?「森友学園」問題
「既得権益とつるんだ霞が関の岩盤規制を自らがドリルになって穴を開ける」。安倍首相はそれが「政治主導」だと言って胸を張る。日本社会を停滞させる霞が関の官僚機構の旧弊を打破するのが政治の仕事だと言う。しかしそれを言うなら間違っても自分の「お友達」に利益誘導してはならない。 仮に「お友達」の事業が最上の評価に値するものであれば、くれぐれも誤解を招かぬよう規制撤廃に至る過程をすべて明らかにする必要がある。そうでなければ「政治主導」の正当性は失われ権力者の資質に疑問符が付く。 「公」の使命のためには「私」の利益は捨てる。「お友達」には涙をのんでもらうのが権力者の矜持と思うが、安倍首相にはそれが分からないようだ。第一次政権では「お友達」を閣内に集めて批判され、第二次政権では「お友達」に利益誘導を行ったのではと批判にさらされている。 通常国会は統治構造の歪みを露呈する異常な国会であった。安倍首相の妻が名誉校長を務めた「森友学園」が8億円の値引きで国有地を払い下げられ、それが追及されると財務省は交渉記録をすべて破棄したと発表した。霞が関を知る者ならありえない話で、不都合だから隠蔽したとしか思えない。 払い下げ交渉には経産省出身の首相夫人付き秘書官の関与も明らかにされたが、安倍首相は「妻も自分も事務所も一切関わってはいない」と全面否定を繰り返し、現場の官僚が勝手に「忖度」したとの「印象」を国民に振りまいた。