マツコの推し・尾上右近、“兄貴的存在”は尾上松也と慕う
心から慕う“兄貴的存在”は「尾上松也」
──役者同士の絆も強いのでしょうか。映画『八犬伝』では、八犬士たちが絆を築き上げていきますが、右近さんにとって特に気心の知れた人はだれでしょう。 「たくさんいますが……。同年代の仲間たちは、八犬士のように、同じ時代に生まれたことを意味のあることだと、ちゃんと捉えています。それぞれの城を築くのではなく、この世代の城をみんなで築こうという感覚でやっていると感じます。その中で、あえて誰かを挙げるなら、尾上松也さんでしょうか。松也さんは、うちの兄と同じ歳で松也さんの妹さんが僕と同じ歳ということもあって、以前からプライベートでもご縁がありました。僕が尾上右近の名を襲名してからは、同じ尾上家の先輩でもありますし、兄貴的な存在なので、何かにつけていまだに相談もします」 ──松也さんからも相談を受けることはありますか? 「松也さんは心の内をあまり打ち明けたりしない人ですけど、でも迷っているんだろうなというときには分かるので、“こういうのはどうですか?”と提案することはありますね」 ──松也さんも、映像作品にもたくさん出ています。舞台でもミュージカルに出られたりと、幅広いお仕事をされていますが、刺激を受けますか? 「そうですね。さっき歌舞伎に戻って来ると“ここだ”と思うと言いましたが、安心すると同時に、“やっぱり歌舞伎は難しい”とも感じるんです。松也さんも“いままでやってきた中で、歌舞伎が一番難しい”とよく言っていますし、僕もその気持ちがよく分かります。 もちろん他の仕事が楽という意味ではないですよ。それぞれに大変ですが、特に歌舞伎の難しさを感じる。それって裏を返すと、歌舞伎を、ずっとやっていく道だと捉えているからなんだろうとも思います」 ずっとやっていく道だからこそ、特に難しさを感じる。なるほど、その通りかもしれない。違うフィールドでも「置かれた環境が自分にとっての最高の場所」と感じながら、軸である歌舞伎に向き合う右近さん。その姿が頼もしい。 尾上右近(おのえ・うこん) 1992年5月28日生まれ、東京都出身。曽祖父は六代目尾上菊五郎。母方の祖父は俳優の鶴田浩二。’99年、7歳のときに歌舞伎座『舞鶴雪月花』の松虫で初舞台を踏む。’04年に新橋演舞場『人情噺文七元結』で、二代目尾上右近を襲名。’18年には浄瑠璃唄方の名跡、清元栄寿太夫を襲名した。’21年に映画『燃えよ剣』で映画初出演を果たし、第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。歌舞伎のみならず、映画やドラマなど映像作品にも活躍の幅を広げている。近年の主な出演作品は、NHK大河ドラマ『青天を衝け』、映画『ヘルドッグス』(2022)『わたしの幸せな結婚』(2023)『身代わり忠臣蔵』(2024)。最新作の『八犬伝』にて、三代目尾上菊五郎を演じている。待機作に映画『十一人の賊軍』、劇場アニメーション『ライオン・キング:ムファサ』。 望月ふみ
望月ふみ