マツコの推し・尾上右近、“兄貴的存在”は尾上松也と慕う
マツコ・デラックスが、「いま一番好きな歌舞伎界のプリンス」として紹介したこともある(『アウト×デラックス』フジテレビ系)、二代目尾上右近。歌舞伎役者としての活躍はもちろん、テレビや映画、さらにはバラエティなどでも活動し、「けんけん」の愛称でも知られる右近さんは、江戸浄瑠璃清元節における七代目清元栄寿太夫の名跡でもある。歌舞伎と清元の二刀流で輝く伝統文化のプリンスは、さらに昭和の映画スター、鶴田浩二を母方の祖父に持つ。伝統芸能と映画界の血を受け継ぎながら、自身の力で輝く右近さんのTHE CHANGEとは──。【第4回/全4回】 ■【画像】敬愛する“兄貴的存在”尾上松也とのリラックスした雰囲気が伝わるほほ笑ましいオフショット 近年、人気の映画やドラマには、必ずと言っていいほど魅力的な歌舞伎役者たちが登場。右近さんも、映画に初出演したのは2021年公開の映画『燃えよ剣』だったが、今年は『身代わり忠臣蔵』『八犬伝』『十一軍の賊軍』と3本もの映画に出演する。 ──歌舞伎俳優たちが映像作品に出ている姿は気になりますか? 「気になりますね。歌舞伎公演を休んでいる間、歌舞伎との距離感をどう感じているのかなとか。自分は映像の仕事をしているとき、映像のほうが楽しいと感じるし、やりがいも覚えます」 ──そうなんですか!? 「映像は例えば映画なら、全国何百館という劇場で上映して、配信となったら、その後も好きなときに果てしなく見てもらえる。ドラマも言うに及ばず。演じる立場としては、現場で“初めまして”の人がたくさんいて、撮影期間の中で、役としても人としても関わって、短い時間で密な時間を過ごしながら、一緒に作品を作っていく。スタッフさんも演者さんもみんなで、監督の示す方向に向かっていく。その集中力はすごいし、熱気は大人の文化祭のようです。青春には期間ってないんだなと、実感させてくれる」
「映像の世界の熱気は大人の文化祭」それでも歌舞伎で一生を終えたい理由
──ステキですね。 「表現に関しても、歌舞伎俳優たちとは意識が違う。歌舞伎役者は代々やってきていて、そこに当たり前の美学がある。それももちろんすごいことだけれど、映像で関わる俳優さんたちには、“一世一代、これは自分が勝ち取った役だ”というプライドがあるし、一代で築き上げた役者という自分のブランドへの意識がある。その、“自分にしかできないこと”をつかんできた誇りは、すごく美しいと思います。そこには勝ち取ったからには、残らなかった人がいるという意識もちゃんとあると感じますし」 ──その通りですが、それにしてもベタ褒めですね。 「で、ここで話が終わったら困るんです」 ──というと。 「いまのように感じるのは本当なのですが、歌舞伎に戻ると、“やっぱりここで一生を終えたい”“この村が一番好きだ”と思います」 ──なるほど。 「どんな国を、海を渡ろうと、どんなに素晴らしい景色を見ようと、この村に骨を埋められることは、自分にとっての幸せな人生の選択であることに間違いないと感じます。僕は、自分を心のバックパッカーだと思っていて、映像に出て行けば、そこですごく幸せを感じる。置かれた環境が自分にとっての最高の場所だと思える才能にすごく長けていると思います。でもやっぱり、最後は歌舞伎なんです」