「イオンでウォーキングする」文化は流行るのか? 実際に体験して「厳しそう」だと感じたワケ
EC全盛の現代で、リアル店舗をアピール
2つ目は、ショッピングモールが潜在的な弱点として持っている「広くて歩くのが大変」というイメージを、むしろ「歩くから健康に良い」と捉え直すことによって、モールの印象をアップさせていることだ。 実際、イオンモールウォーキングのアプリでは、推奨コースに沿っていなくても、モール内を自由に歩くだけでポイントが加算されていく。そのため、ウォーキングコースを歩くためだけでなく、普段の買い物時にも利用できるのだ。いつもは「歩いて疲れる」と思っている人も、「なんだか健康にいいことをしている」と考え直し、普段の買い物もモールで済ませるようになるかもしれない。高齢者も含めEC利用率が増加する現在、モールなどリアルでの購買につながる機会を提供することは重要だ。 3つ目は、WAONへの導線になることだ。WAONはイオンが提供する電子マネーで、これとひもづいたカードやポイントクラブもある。イオンモールウォーキングの景品はWAONポイントなので、アプリでの抽選はWAONに入っていることが前提となる。つまり、イオンモールウォーキング目当ての人をWAONに誘導できるのだ。少なくとも、ただ「入会してください」とモール内で呼びかけたりするよりも高い効果が見込めるだろう。
国をあげてモール・ウォーキングを推奨する米国
さて、このように企業側にとっての利点も多いモール・ウォーキングだが、今後、日本で広く展開していく可能性はあるだろうか。結論からいうと、日本での普及にはさまざまなハードルがあるのではないかと思っている。 前述の通り、モール・ウォーキングは米国発祥の運動で、多くのショッピングモールで取り入れられている。ただ、それは営利目的というより、市民活動の一環にモール側が協力しているという側面が大きい。というのも米国では治安の問題などがあり、外を散歩することが難しい場合が多いからである。 そのため、各モールがテナントが開店するより前にモールのドアを開け、朝からモール・ウォーキングができるようにバックアップしている。例えばケンタッキー州・ルイビルにある「ジェファーソンモール」では、開店30分前からモールを開放。公式Webサイトには「月曜日から土曜日は午前10時30分、日曜日は午前11時30分にオープンします。温度調節された快適な当センターで、ぜひエクササイズをお楽しみください!」と記載がある(筆者訳)。 さらにこの背景には、米国の政府機関である「アメリカ疾病予防管理センター」がモール・ウォーキングを後押ししている背景もある。実際、同センターの公式Webサイトには「モールを散歩しよう」というページがあって、「モールには、散歩や車椅子、ベビーカーでの移動に適した特徴がたくさんある」「多くのモールには、公式のモール・ウォーキング・プログラムがある」としてモール・ウォーキングを推奨している。