中山美穂×木村拓哉 “月9歴代最多主演”がそろい踏み 長編ミステリーの最高傑作『眠れる森』を今見るべき理由
“悲劇のヒロイン”として圧倒的な存在感
中山美穂さんの訃報から10日あまりが過ぎた今も、悲しさや寂しさを感じている人が少なくないだろう。 【写真】46歳の誕生日にイベントに登場した中山美穂さん=2016年3月 民放各局が追悼コーナーを放送しているものの、その大半は歌手としての映像が占めている。しかし、中山さんと言えば80年代から90年代にかけて最も演技と歌の仕事を両立させた女性芸能人だった。 歌手としては各局の音楽番組に出ていた一方、女優としては当時ドラマシーンのトップを走るフジテレビとTBSが競い合うようにオファーを連発。なかでも98年秋に放送された『眠れる森』(フジ ※FODで配信中)は彼女の代表作であり、類いまれなるヒロインぶりを見せたベスト作品にすら見える。 追悼の意味に加えて、クリスマスに近いこの時期の“一気見”に適した作品だけに、このタイミングですすめておきたい。
■中山美穂、唯一の長編ミステリー 中山さんはデビュー当時から主にTBSで『毎度おさわがせします』『夏・体験物語』から『ママはアイドル!』『若奥さまは腕まくり!』などに至る軽いタッチのラブコメ、フジでは『君の瞳に恋してる!』『すてきな片想い』『逢いたい時にあなたはいない…』などの王道ラブストーリーに出演。90年代中盤に入ると、シングルマザー役の『For You』、シェフ志望女性役の『おいしい関係』に挑んだあと、『眠れる森』にたどり着いた。 中山さんの主演ドラマで『眠れる森』のような長編ミステリーは唯一と言っていいだろう。その長く重い物語は、15年前のクリスマスイブに起きた「市議会議員一家惨殺事件」の映像からスタート。唯一の生存者となった大庭実那子(中山美穂)は当時の記憶を失いながらも、恋人・濱崎輝一郎(仲村トオル)との結婚を控えて幸せな日々を送っていた。 ある日、実那子は事件直後にもらった手紙の束を見つけ、そこに書かれた「15年目の今日、眠れる森で会いましょう」というメッセージをもとに故郷の森を訪れ、謎の男性・伊藤直季(木村拓哉)と出会う。しかし、実那子の過去を知る直季は婚約者との別れを迫るなど悪態をついた上にストーカーのようにつけまわし、その一方で事件の真相を探っていた……。 姉の元恋人で犯人として逮捕された国府吉春(陣内孝則)、直季と事件を追う幼なじみの中嶋敬太(ユースケ・サンタマリア)、直季が期間限定で交際した恋人・佐久間由理(本上まなみ)、森に住む直季の父・伊藤直巳(夏八木勲)ら周囲の人物も謎多きミステリーを盛り上げた。 当時シーンのトップを走っていた脚本家・野沢尚さんによる物語は、全12話アッと言う間に見終えてしまいそうなほどの没入感がある。断片的に記憶が蘇るヒロイン・実那子の周囲に直季も含め影のある男たちを配置し、さまざまな角度から彼女を追い詰めていくことで視聴者の感情移入を加速。中山さんが演じる効果もあって、実那子は暗い過去や厳しい現実に翻ろうされ続ける“悲劇のヒロイン”として圧倒的な存在感を放った。