さだまさしは「本当にオンとオフがない人」 異例のタレント本「さだまさし解体新書」から浮かび上がる人気の秘密
さだ研は本当に研究しているのか
――『さだまさし解体新書』の著者「さだまさし研究会(以下、さだ研)」は有名な大学サークルですよね。 宝福:「早稲田大学さだまさし研究会」(※)が最大手ですね。インカレサークルなので他校の学生も入れますし、國學院大學だった僕も未所属でしたが存在は知っていました。『さだまさし解体新書』では、研究者やさだ研の現役生、卒業生といったみなさん全員を「さだ研」として大きく括っています。(※文化放送「セイ! ヤング」をきっかけに設立され、今年で設立42周年を迎える) ――本を出すことになったきっかけは? 宝福:昨年の2月頃、さだから「俺のデビュー50周年だから面白いことをやりたいなあ」と言われたので、「さだ研本を作りませんか?」と提案しました(笑)。もちろんさだも「さだ研」を知っていて、「本当に俺のこと研究してるのか?」という素朴な疑問を抱いていたようです。「それならしっかりとアンサーを提示しよう」と企画が始まりました。 さだまさしを好きな研究者が各自の分野でアプローチするという内容は、ゴスペラーズの北山陽一さんと相談して決まりました。北山さんの言葉を借りると「研究者アベンジャーズ」のような本ですね。
オンとオフがない「職業:さだまさし」
――『さだまさし解体新書』には研究論文と対談が6本収録されています。北山さんの音声研究(※)をはじめ、各自の専門分野を深く掘り下げているため、途中で「さだまさしの話」ではなくなっている論文もあります。(※第1章「さだまさしのアクセント研究 『秋桜』の順行・逆行分析から探る」) 宝福:そうなんです(笑)。たとえば、関沢まゆみ先生(国立歴民俗博物館教授・博士)の論文(※)は、さだの歌詞を民俗学の観点で分析し、折口信夫を引用するといった本格的な内容になりました。(※第3章「人生と老い、その豊かさ 生き直しの民俗学」) ――「さだまさし」をテーマにして広がる研究論文を読んでいると、「さだまさしとは何者か」と考えてしまいます。 宝福:歌手や小説家、アーチストなどいろいろな括りはありますが、間近で見ていると「職業:さだまさし」だなと思いますね。バイタリティにあふれていて、2夜連続コンサートの1夜目と2夜目の間に小説を2冊読んだりするんですよ(笑)。「昨日これ読んだんだけど、面白いぞ」と普通に、何事もなかったかのように言う。またそれが近未来のSF小説だったので、「知り合いの物理学者に送らなきゃ」とすぐに送る行動力もあります。 いろいろな曲を書くには“入れるもの”がないと出せないと思いますが、その“入れるもの”の量が桁違いです。それでも古くからのスタッフによると「最近は全然入れてない」そうです。なら、昔はどれだけすごかったのか(笑)。