<女子バレー>真鍋ジャパンに化学反応を与えた新戦力
リベロの佐藤あり紗も、この大会でブレイクした一人だ。24歳。経験がものを言うポジションだけに、不安もあった。事実、初戦のロシア戦では、味方選手と交錯するなど粗さも目立った。それでも、トスを上げると見せかけて相手のコートにぽとりと落とすなど、フェイントによる得点でインパクトを残した。ブラジル戦のあとの会見でも、フレッシュな一面をのぞかせている。 「ブラジルのレシーブやつなぎ、最後までボールを“追いかけない”姿勢を見習ってこれからも頑張っていきたい」 隣にいた木村にうながされて、ハッとした。「すみません。“追いかける”です」。照れ笑いが、場の空気を和ませた。「リベロ賞は、監督やスタッフがたくさんの経験をさせてくれたおかげ。たくさんの応援が励みになりました」。つかんだ自信は、大きな糧になった。 ■天才不在の全日本のチーム力が 今の全日本に天才はいない。鉄腕もハイタワーもいない。個々の能力はどうしたって世界に劣る。だが、長い時間を共有することで、チームとしての技術と連係を研鑽した。押し寄せる黄色い声援にもひるまない勇気も身につけた。その中心で若い力を引き出したのが、今季から主将になった木村の求心力だ。手垢のついた言い方をするなら、チームには“和”があった。 眞鍋政義監督もしかり。机上の新フォーメーションを、国際大会で実用化した。高校の体育館ではない。世界のトップがしのぎを削るスタジアムで実践したのである。勇敢な決断に、選手は全力で応えた。最終日まで金メダルの可能性を残すなど、ここ数年の国際大会ではなかったことだ。ピリッとした緊張感は、最後のホイッスルが鳴るまで続いた。 「今年は9月に世界選手権の予選があった。それだけは絶対に切符を取らないといけない。そのあとのグラチャンしかなかった。ここしかなかった」 ■グラチャンで試した新フォーメーション ここしかなかった。「MB1」を使うタイミングだ。 もちろん課題はある。若さは反面、もろさも併せ持つ。眞鍋監督は「いいときはいいが、うまく回らないときに連続失点が多い」と反省材料を挙げた。 特にミドルブロッカーが抱える問題点は、いまだ解消には至っていない。新しいフォーメーションによって、コートに入るミドルブロッカーが2人から1人に減った。「初めて新戦術を聞いたときは悔しい気持ちがありました」。それが現実。こう言い切ったのは、チーム最年少、19歳の大竹里歩だ。