<女子バレー>真鍋ジャパンに化学反応を与えた新戦力
逃げない。少しくらい体勢が崩れても、全力で右腕を振り抜く。愚直にして繊細。剛と柔を巧みに操る。それが、石井優希の本領だ。 ■グラチャンバレー12年ぶり銅メダル グラチャンバレー2013。日本を12年ぶりの銅メダルに導いたのは、初代表のうら若き才能だった。ロシア戦は、痛快な勝利だった。流れをつかんだのは第1セットの終盤、20-17の場面で木村沙織が上げた二段トスを、石井が渾身の力で打ち抜いた。フェイントで相手のブロックを避けていれば、確実にレシーブの餌食になっていただろう。しかし、真っ向勝負で高い壁をぶち抜いた。この得点で火がついた日本は、ロシアの守備陣を翻弄して3-1で快勝した。 「あの一球は、自分にとっても大きな決定打でした。私自身、どんどん調子が上がっているので、もっといろんな場所から(トスを)呼んでいきたい」 ■チャンスの掴んだ石井優希 本来であれば、セッターの対角には江畑幸子が入るはずだった。あるいは、ライトもできる新鍋理沙か。しかし、肝心の江畑が大会の1週間前に腰を痛めた。空白になったポジション。巡ってきたチャンスを、石井は逃さなかった。 所属する久光製薬では、守備での貢献も大きい技巧派だ。繊細な観察眼を持つ中田久美監督に見いだされ、昨季からレギュラーに抜擢された。勝負の世界の住人から、生きる術を学んだのである。 通称「MB1」。新しいフォーメーションを敷く全日本では、サーブレシーブが免除されている。プレーの軸足を攻撃に置いた石井は、持ち前の決定力の高さを発揮した。ブロックアウトで高いブロックをかわすだけでなく、球足の長いスパイクで相手コートの奥を突いた。5試合を通して決めたスパイクは67点。40.12パーセントの決定率は、全6チーム中4位である。42.74パーセントで1位になった木村と比較しても、大立ち回りの活躍だったと言えるだろう。 ■石井だけではない 新戦力の台頭 石井と同期の長岡望悠も、今季、初めて日の丸のユニフォームに袖を通した。大会前に左足首を故障したが、第2戦のアメリカ戦でコートに立った。2セットビハインドの第3セットには、切れ味鋭いスパイクで流れを変えた。スピードのある攻撃でバックアタックを決めるなど、貴重なセットを奪う原動力になった。 「長い期間の試合や遠征を繰り返したことが、自分にとっては大きな経験になった。世界と対戦して学んだことを、今度は日本の試合(V・プレミアリーグ)でレベルアップさせていきたい」