「やらされ仕事」の交通安全協会、支部が退会届け出 担い手不足や集金が負担、「必要と思える」子どもの安全守る組織に衣替えへ
■塩尻交通安全協会の大門支部が退会を決議
長野県の塩尻交通安全協会(塩尻市・朝日村)の大門支部は総会で同安協からの退会を決議した。大門支部は同安協を構成する11支部の一つで、塩尻市大門地区の住民ら約100人で構成する。支部役員らによると、交通安全運動期間中の啓発や、同安協に納める賛助金集めなどが負担になっていた。同支部は子どもの交通安全確保を担う組織に衣替えする。 【写真】学生や警察官ととも交通安全協会員が安全運転を呼びかける
支部役員らは同安協に退会を届け出た。安協事務局は取材に「退会に関する規定がなく、総会での承認が必要とみられる。対処法を検討している」とした。県交通安全協会(長野市)は県内全28安協で支部が退会する例について「把握していない」としている。
■出席求められる啓発活動 賛助金の集めに行くと住民から反発も
大門支部や地区役員らによると、季節ごとの交通安全運動の啓発や地元のハロウィーンイベントでの交通案内、小学校の自転車教室運営に塩尻安協や関係団体から出席を求められる。仕事を休んで参加する例もある。
加えて、塩尻安協に納める賛助金についても議論になっていたという。同安協の求めで1世帯当たり千円(本年度は500円に独自に減額)を集め、半額を協会に納めているが、協力を得られるのは5割程度。賛助金は支部の活動費にも充てており、「一部の負担で運営するのは不公平」との声が役員の間にもあった。集金にかける時間や労力は負担が大きい上、住民の反発もあり、精神的負担となっていたという。
こうした状況を踏まえ、支部は本年度、大門地区区長会と共に組織の在り方を検討。安協を退会し、子どもの安全を見守る組織に生まれ変わることを24日の支部総会で、全会一致で決議した。新組織は夏までには発足させたいとしている。
■子どもの交通安全確保に特化した活動をする団体への移行
塩尻交通安全協会大門支部が同安協を退会し、子どもの交通安全確保に特化した活動をする団体への移行を決めた背景には、地区役員のなり手不足や人口減少、住民の価値観の多様化が顕在化する中、自発的に活動する自治の在り方を模索したい―との思いがある。
大門地区は塩尻市の中心市街地。役員らによると、エリア内にあるJR塩尻駅での啓発や、繁華街の飲酒運転防止呼びかけなど同支部ならではの活動があることも負担の原因だという。