札幌山の手FW、元フィジー代表の祖父にささげた奮闘 高校ラグビー
全国高校ラグビー大会(毎日新聞社など主催)に留学生が初めて出場してから30年が経過した。外国にルーツのある選手はもはや珍しくなく、27日に東大阪市花園ラグビー場で開幕した第104回大会には、強豪国の元代表選手を家族に持つ留学生も出場している。 【写真】フィジー代表の試合前に整列する祖父、ナイブカ・ブリさん 1918年に始まった全国高校大会に留学生が初出場したのは94年度の第74回大会で、ラグビー大国のニュージーランド(NZ)から仙台育英(宮城)に入学したブレンデン・ニールソン(現・ニールソン武蓮傳)。日本国籍を取得し、第104回大会では監督として母校の仙台育英を導いている。 留学生を多く受け入れてきた学校の一つが札幌山の手(南北海道)だ。過去に日本代表としてワールドカップ(W杯)に4大会連続出場中のリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)らを輩出。今大会はNZ育ちのFWウルイラケバ・タレマイトガ(2年)を擁し、出場した。 タレマイトガは強豪国フィジーの首都、スバ生まれ。祖父はフィジー代表FWとして91年W杯に出場したナイブカ・ブリさん、おじはリーグワン・三重ホンダヒートなどでプレーしたビリアミ・ブリさん、とラグビー一家に育った。 幼少期に家族でNZのクライストチャーチに移住したタレマイトガも当然のようにラグビーに親しみ、13歳から本格的に競技を始めた。札幌山の手には姉妹校、セントビーズ・カレッジから留学。セントビーズ校の先輩であるリーチ選手に憧れての決断だったという。将来の夢は日本代表入りだ。 そんなタレマイトガは「花園での活躍を祖父にささげたい」と、今大会に臨んだ。 異国での挑戦を見守ってくれた祖父は今年6月に病死した。第104回大会を観戦する計画もあっただけにショックは大きく、一時帰国した。「いつもすごく応援してくれた。再会を約束していたので傷ついた」と語る。 それでも、9月の南北海道大会では178センチ、99キロの体格を生かした接点での強さを発揮し、花園切符獲得に貢献した。 プレーだけでなく、人なつこい性格の人間性も魅力で、チームに欠かせない存在だ。寮や遠征先では夜間に日本語を熱心に勉強する一面もある。 「大切なのはチームプレー。最初は花園って何のことか全く分からなかったけれど、今は大切な場所。僕の家族である山の手のみんなで活躍したい」と挑んだ今大会は、27日の1回戦・高鍋(宮崎)戦にロックで先発出場。果敢に突進して攻撃の起点を作り、素早い反応でこぼれ球を奪取するなど奮闘したが、後半途中に交代し、悔しそうに顔をしかめて下を向いた。 チームも5―31で敗退。同じFWで主将の古谷飛翔(3年)は「後輩たちには(経験を)来年につなげてほしい」と言った。祖父への思いに、先輩から受けたバトン――。その二つを胸に、異国での挑戦は続く。【谷口拓未】