大型台風でも「出社は社員の判断に任せる」の無責任…企業のあいまいな対応が生み出す“出勤ぶりっ子”の正体
「#台風だけど出社させた企業」
「出勤ぶりっ子」とは、「こんな悪条件の中でも仕事のことを考えて会社に来ている私・僕って偉いでしょ?」というアピールする人のことです。そんな意図はない場合も多いですが、無意識のうちについ「会社に良かれと思って」という判断をしてしまうのがニッポンのぶりっ子社員の性です。 令和元年10月13日に日本列島を襲った台風の日、ツイッターには、「#台風だけど出社させた企業」というハッシュタグがあふれていました。 ザッと名前を挙げると、ヨドバシカメラ、すしざんまい、すき家、白木屋、笑笑などの居酒屋チェーン、サミット、ライフ、ダイエーなどのスーパー、イオンなどの名前が挙がっていました。ヨドバシカメラに関しては、ツイッターによる拡散の影響か、途中からその日の店舗閉鎖を発表しました。 それにしても、「台風なのに出社を命ずる会社がある」こと自体、日本の闇を物語っているようです。大規模な台風が来ると会社も予め分かっているにもかかわらず、社員に出勤させることで命の危機が及ぶかもしれないことには知らん顔。 このことだけでも相当闇が深いのですが、さらに闇が深いのは、上記のように「#台風だけど出社させた企業」というハッシュタグのもと、社員だと思われる人が出社させられた自分の体験を書きつつも、企業名は伏せているツイートも目立ったことです。 企業名を明かしてしまうと、会社側に誰がツイートをしたのかバレてしまう可能性があり、そうすると解雇される可能性があるからだと思われます。 ヨーロッパならデモが起きてもおかしくない状況なのに、日本では身バレを恐れてこっそりツイッターで発信するのが恒例となっています。バレた後のことを考えると当事者の気持ちも分かりますが、やはり顔を出して全員で連携してこの手のことと闘ったほうがよほど生産的だと思ってしまいます。
駐在員から“不人気”の日本
日本人にはいつでもどこでも仕事を優先するのが良いという考えが無意識に刷り込まれているため、自然災害という脅威の中でも自ずと働いてしまうのでしょう。 しかし、社員にとっての万が一を考慮しない会社が普通にあるという現状では、ニッポンで働くのを嫌がる外国人が多いのも無理はありません。現に、2019年7月に英金融大手HSBCホールディングスが発表した「各国の駐在員が働きたい国ランキング」で、日本は33か国中の32位というなんとも残念な結果となってしまいました。 興味深いのは、東京や大阪が安全な都市のランキングに入っている一方で、日本では働きたくないと考える外国人が多いことです。 つまりニッポンは、シンガポールや香港のように「ワークライフバランスが良いとは言えないけれど高給」でもなければ、欧米諸国のように「賃金が高いとは言えないけれどワークライフバランスは良い」わけでもないのです。 言ってしまえば、ニッポンは低収入、そしてワークライフバランスが悪いので、これでは人気がないのも当たり前と言えば当たり前です。 仕事の世界においては、皆さんシビアですから「日本の文化が好きな人は、低賃金でワークライフバランスが悪くても来てくれるだろう」なんて甘い考え方は今後通用しなくなるでしょう。
サンドラ・ヘフェリン