『わたしの宝物』と『さよならのつづき』の意外な共通点とは? 2024年の話題作が繰り返し描くシチュエーションを徹底解説
フジテレビ系で放送中のドラマ『わたしの宝物』、Netflixで配信中の『さよならのつづき』、そして絶賛公開中の映画『室井慎次 生き続ける者』。一見関連性が見出せない3つの作品にはとある共通点がある。そう、いずれの作品においても、「図書館」が重要な役割を果たしているのだ。「ドラマや映画ではなぜ図書室で恋愛が生まれやすいのか」をテーマにしたコラムをお届けする。(文・小林久乃)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】有村架純と坂口健太郎の演技が最高…貴重な未公開カットはこちら。『さよならのつづき』劇中カット一覧
2024年に話題を集めた作品の共通点としての図書館
365日、ドラマや映画を追い続けるオタクの私にふと疑問がわいた。 「なぜ、ラブストーリーは図書館のシーンが多いのか。もっと言えば図書館で恋が始まるのか」 例えば現在放送中の『わたしの宝物』(フジテレビ系)。神崎美羽(松本若菜)と冬月稜(深澤辰哉/Snow Man)が学生時代に交流を深めていたのは、図書室。そしてふたりが再会をしたのもまた図書室。 現在配信中のドラマ『さよならのつづき』(Netflix)では、豪雨で大学に宿泊した菅原さえ子(有村架純)が目覚めると、成瀬和正(坂口健太郎)が朝起こしに来るというシーンもありました。あれは完全に恋愛の濃度が上がっていたはず。『恋愛バトルロワイヤル』(Netflix)でも恋愛関係にある教師と生徒が図書室で密会していた。 公開中の映画『室井慎次 生き続ける者』でも森貴仁(斉藤潤)の初恋が、学校の図書室で終わっていた。古い記憶を反芻していくと(個人的に)不朽の名作ドラマ『魔女の条件』(TBS系・1999年)で、教師の広瀬未知(松嶋菜々子)と、生徒の黒澤光(滝沢秀明)が初めて結ばれたのは学校の図書室! カーテンと毛布代わりにしたシーンが本当に素晴らしかった…し、他にも映画『君の膵臓をたべたい』もそうだし…とカウントを始めると、枚挙にいとまがない。これはなぜ?
静寂を要求されるシチュエーションだからこそ引き立つドラマ
昔、書店や図書室で同じ書籍に男女が手をかけて「あ…」と、何かが始まるシチュエーションはよく見た。けれど小学生から本屋しか行っていないような、本好きの私にそんな経験はない。やはり、図書室ラブはドラマ制作陣による創作なのか。 この疑問に対してあまりにも悶々としたので、先日、ドラマオタクの出版社編集部員(A)、ドラマ関係者(B)と私で話す機会に質問を投げかけた「ドラマや映画ではなぜ図書室では恋愛が生まれやすいのか」。以下が彼らの意見だ。 私「小説でもなんでも創作恋愛は何か障害、抑制、禁忌があるといい。不倫ドラマなんて一番いい例ですよね。そう考えると図書室には静寂がある」 A「それには図書室、図書館は手っ取り早いですよね。どんなに若者が行っていても、騒がしいマックでは恋愛はしづらい」 私「スタバ…は店舗によっては静かにしていなくちゃいけないから、ワンチャンあるかもしれません。あと最近だと借りているシェアオフィスとかもそうですけど。映画館は静かすぎて無理かな」 B「静かにしていなくちゃいけないと、アイコンタクトでふたりだけの空間が生まれやすいと思います。オフィスラブも不倫もそういうことですよね。誰にも知られない世界」 ここでの意見を統括すると図書室という、真面目そうな雰囲気かつ静寂を要求されるシチュエーションは、ふたりだけの世界が生まれやすいということになる。そうだよな、『魔女の条件』も図書室という場所での一夜だったから、視聴者の印象に残った。もしあれが歌舞伎町のラブホだったら絵になりづらい。