<「大虐殺」の「予行演習」!?>ロシアの関与疑われるデマの拡散で反移民暴動が起きたイギリス 背景にある「グレート・リプレイスメント」陰謀論とは何か?
極右やネオナチが暴動の主力に
事件発生の翌日である7月30日、サウスポートでの追悼集会に乗じて暴動が発生した。極右勢力は地元のモスクにレンガを投げつけ、モスク周辺の建物を破壊し、警察官を襲撃し、自動車に火をつけた。この結果、50人以上の警察官が負傷している。 暴動は他の都市にも広がったが、当局は容疑者がルワンダ系のイギリス人であることを改めて発表した。彼はシリア人でもイスラム教徒でもない、と強調したが、暴動はすぐには収まらなかった。イングランドのいくつかの都市では、数百人の極右活動家が政府機関の近くや移民の住む地域に集まって外国人や警察官を脅し、石や火炎瓶を投げつけた。 各種調査によれば、ほとんどの暴徒は極右、ネオナチ、過激派グループのメンバーだったことが確認されている。前述のイングランド防衛同盟のほか、ファシスト集団「パトリオティック・オルタナティヴ」、ナチズム集団「ブリティッシュ・ムーブメント」のメンバーによって、10などのSNS上で暴動の写真が公開された。その中で彼らは、「武装したイスラム教徒の群衆」が暴動を起こし、「罪のないイギリス人」を攻撃したという偽りのナラティブを主張していた。 極右監視センター「ホープ・ノット・ヘイト」は、反移民暴動がテレグラムとワッツアップといったSNSのグループで調整されていたことを発見した。テレグラムには「サウスポート・ウェイクアップ」というチャットルームが開設され、暴動への参加を呼びかけ、ナチスのシンボルやサウスポートにあるモスクの住所が映った動画を投稿していた。 イギリス全国警察署長会議(NPCC)によると、7月29日以来、この暴動で警察は1511人を逮捕し、また、警察と検察は960件の告発を行っている。前述した極右の動きに対抗するため、良識あるイギリス人は、「極右を止めろ 人種差別主義者に我々を分断させるな」というスローガンを掲げて抗議した。 この暴動について、「Channel3 Now」のルートにおけるロシア関与の証拠は不十分ではあるものの、これまでロシアがイギリスに行ってきた影響力工作のアプローチやそのナラティブとの類似、SNSで拡散を行ったクラスタの分析から、ロシア関与の示唆は多く確認できる。 これまで、ロシアの影響力工作は常に北大西洋条約機構(NATO)諸国の内部対立を悪化させようとしてきた。だがイギリスではそれらに加えて、ロシアはイギリス人と移民の間に存在する対立を利用し、民族的憎悪を煽ってイギリス社会を弱体化させようとしている。