法務副大臣辞任の柿沢未途氏 区議に払った「陣中見舞い」は1万円か20万円 高額な差が示す裏事情
本誌既報(「法務副大臣を辞任」の柿沢未途氏が「買収」で逮捕される可能性…一部区議に「現金バラマキ」疑惑浮上)通り、今年4月の江東区長選挙を巡り、江東区を地盤とする柿沢未途前法務副大臣(52)が区議らに現金を配ったことが、11月3日の各紙朝刊で報じられた。 【内部資料】山崎元江東区長の不正がびっしり…衝撃の証拠文書 「柿沢議員側、現金配布か 区長選前、複数の区議に」(日本経済新聞) 「江東区長選挙 買収疑い 地検聴取 区議ら『柿沢氏から現金』」(読売新聞) 「柿沢議員側 区議に現金か 江東区長選 木村氏が出馬表明後」(産経新聞) 「柿沢氏側 区議に現金か 『江東区長選と関係なし』(毎日新聞) それまでは、木村弥生区長(58)が自身に票を呼びかける有料広告14万円を動画広告サイトに支払っていた、として公職選挙法違反の疑いが争点であった。 東京地検特捜部による強制捜査から2日後の10月26日、木村区長は辞職を表明。柿沢氏は朝日新聞の取材に対し、有料広告の使用を「私が勧めた」と証言し、10月31日に法務副大臣を引責辞任。 その後、動画撮影のために永田町の議員会館の会議室を使用したことも発覚し、柿沢氏の積極的な関与が明らかとなってきた。 東京地検特捜部は有料広告使用の疑いで木村氏の自宅や実家、区長室など強制捜査を行った。だが、捜査の本命は区長選における柿沢氏の現金バラマキの実態解明だった。 「選挙、頑張ってください」 今年2~3月、柿沢氏は10数名の区議に現金の提供を申し出た。実際に動いたのは柿沢氏の父の弘治元外務相(故人)の秘書を務めた前区議のI氏だ。区長選では木村陣営に加わり、自身の選挙カーを持ち出し、区長選の選挙運動を差配していた人物でもある。 I氏を中心とした事務所関係者が10数名の区議と接触し、柿沢氏の名前が記された現金が入った封筒を手渡す。受領の確認として領収書をもらう。これが4月の選挙までに複数回繰り返されていたという。 区議に配った現金が政治資金なのか、区長選で票の取りまとめを依頼したものなのかーー、ここが捜査の争点となっている。 全国紙司法担当記者がこう語る。 「陣中見舞いが『政治活動のための政治資金』として譲渡されたものであれば違法性は問えない。しかし、その現金が、『区長選の票の取りまとめを依頼したもの』『区長選での選挙運動の報酬』と判断されたら、『カネで票を買った』と買収罪の容疑となり、逮捕も視野に入ることとなろう」 配ったカネは本当に陣中見舞いなのか。 木村氏の選挙を手伝った鬼頭達也区議会議員(70)は11月3日、門前仲町の選挙用の事務所前で囲み取材に応じ、「1万円が入った封筒を渡された」といい、こう続けた。 「陣中見舞いです。それでみなさん調べているんでしょ? 私は(政治資金以外は)一切もらってません」 柿沢事務所に問い合わせると、こう語り、違法性を改めて否定。 「区議選の陣中見舞いとして配ったもので、領収書も1枚1枚保管しており、適正に処理をしている」 区議や支援者に確認をとると、陣中見舞いの名目で配られた現金は1万円か20万円のようだ。元々、柿沢氏と近い区議には1万円が渡されている。 一方の高額となる20万円の陣中見舞いは5人の自民党系の区議に配られたと思われる。 同じ区議で、なぜ20倍もの開きがあるのか。 「柿沢氏は当選5回で、みんなの党や維新の会など野党議員としての活動が長い。’21年の衆院選を無所属で出馬し、勝利後、自民党所属となるが、東京都連の幹部らの反発が激しく、江東区のある自民党東京都第15選挙区支部長に選任されるのに2年の時間を要した」(政治部記者) 今年7月に支部長となるも、その経緯から自民党の区議とは距離があった、と陣中見舞いを持ちかけられた区議は語り、こう続けた。 「何度も選挙で闘ってきた間柄で、距離を縮める意味で高額な陣中見舞いと考えたのだろうか。区長選での木村氏への支援の要請はなかったが、選挙直前で配るわけで、『こちらに付いてくれ』という趣旨が潜むのではないか」 区長選は自民党内で激しく対立した構図となった。自民党推薦で、前区長の長男の山崎一輝都議(50)と自民党の衆議院議員を務めた木村氏が争った。山﨑氏の応援には菅義偉前総理(74)や茂木敏充幹事長(68)をはじめ閣僚経験者が続々と入り、自民党東京都連のバックアップは凄まじかった。 「区長選は前区長の急死に伴うもので、弔い合戦でもあり、木村陣営は苦戦が予想されていた。焦ったのか、山崎氏を支援した区議にも陣中見舞いを持ちかけていたようで、刺された(告発)のではないか」(同区議) 現在、東京地検特捜部が配られた現金の趣旨を巡り慎重な捜査を行っていよう。10名以上の区議の名前と配布額が記された「配布リスト」もあったようで、区議の取り調べを行っている。 「現金の名目が陣中見舞であったとしても、実質的に区長選での選挙運動での謝礼であれば買収罪にあたる可能性はある」(前述の司法担当記者) 柿沢氏本人からのしっかりとした説明は未だに行われていない。 取材・文:岩崎 大輔
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