高尾美穂医師 「できないことがある」気づいたら手放そう AGフレンズ
【&w連載】AGフレンズ
Aging Gracefully(AG)プロジェクトが2024年度「AGフレンズ」の1人としてお迎えした、産婦人科専門医の高尾美穂医師にインタビューしました。昨年度に続いて、AG世代(40代と50代)に向けたメッセージをお伝えします。 【画像】もっと写真を見る(4枚) ――8月に『こうしたらきっとうまくいく 心がフワッと軽くなる82のヒント』(扶桑社)、9月に『あしたはきっと大丈夫 心が晴れることば』(コスミック出版)と、2冊続けて著書を出版されました。子育てや交友関係、仕事など、さまざまな立場で悩む人たちに向けて語りかける内容になっています。 これまでの社会では、自分とは全く違う生き方をしている人が身近にまあまあいたと思うんです。でも今は、似たようなタイプの人しか近くにいない状況で生きることが可能で、自分とは異なる経験をする、自分とは異なる時間を過ごす人のことをイメージしにくい時代になっている。それが、他人のことはとりあえず置いて、自分が良ければいい、という社会の空気になってしまっている理由なのかな、と思うことがあります。 ――自分以外の人に対する想像力は大切ですよね。パートナーにも友達にも、国家レベルでも。 でも想像力は、自分が経験したことからしか生まれないわけで、経験の幅がすごく狭くなっていると、あまり想像できないわけです。だから、本や新聞を読むことには意味がある。自分が知らない人生を、たとえば小説の中で生きることができますよね? そういうイメージで、いろいろな女性の人生があることを伝えたいなと、いつも思っています。 ――たとえば、Yahoo! やGoogleのニュースを見ていると、だんだん自分の思考に合ったものしか表示されなくなり、幅が狭くなってくる気がします。 しかも、自分が選んでいるように見えますよね。いろいろなものの中から自分が選んで情報を得ていると思いがちだけど、そもそも見えているのは今までの思考回路に合ったものばかりで、その中からさらに選んでいる、ということに気がつかないと、選択の幅が狭くなり、かなり偏っていることにも気づけません。自分はフラットに物事を見ていると思っているし、判断するための材料となる情報も広く手に入れていると思っている。でも、デジタル社会においては、気がつかないうちに相当偏ったものを届けられているわけです。 ――普段から偏った情報しか得ていないと、視野も狭くなりそうです。 そこに気がつけると、意図的に自分とは関係のないところからも情報を手に入れようとするはずで、違う世代の意見を聞いてみるのもいいですよね。違う世代は、たいてい違う情報源から判断しているので、たとえば、友達のお子さんからも全然違う意見を聞けます。 また、上の世代の発言が必ずしも正しいとは限りませんよね。「それは違う」と思ったら、まずは受け止めましょう。受け入れなくてもいいんです。要は、受け止められるかどうか。「そんなことは起こり得ない」と思うようなことが身近で起きても、一度受け止めることが大事なんです。たとえば息子が「僕ゲイなんだよね」と話したときに「いやいや、そんなことはあり得ない」と言ってしまうと、そこから先の情報はまず入ってこない。でも、「そうなんだね」ととりあえず言えたら、次も何か言ってきてくれるかも。だから、特にほかの世代に対して、シャッターを閉じてしまわないことがすごく大事だと思いますね。