衆院選の選挙制度改革 「アダムズ方式」は一票の格差を埋められるのか
2016年1月14日、衆院議長の諮問機関「衆院選挙制度に関する調査会」は衆議院の議席配分において、「アダムズ方式」を採用するように求めました。アダムズ方式とは各都道府県の人口を同じ数値で割って、その答え(定数)の合計が全国の衆院議席数とほぼ同一になるように調整する計算方式で、「各都道府県の定数=各都道府県の選挙区数」という仕組みになっています。 この方式を衆院選挙の小選挙区で採用すると、東北や九州などの13県では1議席ずつ減る一方、東京・千葉など人口が多い1都4県では合計で7議席増えるので、小選挙区の定数は「7増13減」となります。このようにアダムズ方式は都道府県の人口比率を反映しやすいのが特長で非常に合理的な方法といえますが、その採用をめぐって各党の意見が対立しているのが状況です。 そもそも、なぜこうした選挙制度の改革が持ち上がったのでしょうか。また、アダムズ方式の採用で今後衆院選はどう変わっていくのでしょう。政治ジャーナリストの鈴木哲夫さんに聞きました。
選挙制度の不平等「一票の格差」
「選挙制度改革の目的のひとつは『一票の格差』の是正にあります。一票の格差とは、それぞれの選挙区の人口が異なるため、1票の重みに差が生じてしまうこと。例えば、選挙区Aは人口が少なく獲得数が100でも当選できるのに対して、都市部の選挙区Bでは200票獲得しないと当選できない、といった事態が起きてしまっているのです」(鈴木哲夫氏) 法案改正の採決が行われる国会において、議員の一票はとてつもなく重いもの。過疎地で出馬して10票で当選した議員も、都市部で1000票獲得した議員も国会では同じ1人(1票)として扱われるのに、その議員を選ぶ票に格差があるとなれば平等に民意が反映されていると言えません。 実際、一票の格差が2倍以上だった14、15年の衆院選挙は最高裁で違憲と審判されており、今回の諮問機関の答申に7増13減が盛り込まれたのもこうした不平等を是正するための措置なのです。